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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


俺が大の国に帰国して、すぐに、二ノ国からマリウスがやってきた。


タエとカズから、俺の事情や、大のの城のことなど、事細かに引き継ぎを終えた優秀な人物ということで、母上に連絡がいき、すぐその日から俺の身の回りの世話係となったのだ。


……もちろん、俺が男なのも知ってる。


マリウスが持参してきたカズからの手紙には、彼は全て把握してるから安心してください、とあった。
そして、信頼できる男だから、とも。

まあ、俺も二ノ国にいた頃から思っていたが、マリウスは確かに必要以上に詮索もしてこないし、報告は的確で簡潔だし、スマートな男であった。

使用人としては申し分ないだろう。

ただ、外部から、しかも男の使用人が、姫である俺につくということで、周りは、だいぶ、さざ波がたったようだった。

実際は、何も知らない女の使用人が俺につくと、それはそれで問題だもの。

だけど、それらは全て母上がおしきった。


……さすがだ。





鼻をつまんで、そのお茶を飲みきり、吐きそうなのをこらえてティーカップを突き返す。


「ん」

「……よくできました」


にっこり笑って褒めるマリウス……つか、笑ったぞ!


俺がぽかんと口をあけてると、どうしました?と眉をひそめてくる。


「いや……おまえが笑った、と思って」


すると、マリウスは心外だというように肩をすくめた。


「私だって、たまには笑いますよ」

「見たことなかったもん」

「……じゃあ、初出しですね」



言いながら、小さなチョコレート菓子を俺に手渡してきた。


「?なに?」

「口直しです」

「わぁ……気が利くなぁ」


俺は嬉しくて、ぱくりとそれを口にいれた。


「カズナリさまから、あなたは甘いものに目がないとお聞きしてますので」

「……うん、そうだな」


口のなかでとろける甘さを楽しみながら、俺はこっくりうなずく。


いや、これうまい!


食べたことのない菓子だった。
カトリーヌの新作だろうか。


「もう一個ちょーだい」

「ダメです」

「は?なんで?」

「サトコさまが太らないように気をつけて、とも言われてるので」

「誰に」

「カズナリさまです」


マリウスは、しれっと言ってのけた。

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