
キラキラ
第34章 バースト9
あ。パンケーキ食べたいって言い損ねた……
ま、いっか、と、翔の後ろ姿を見送りつつ、カフェの中に集う学生を、ぼんやりと見渡す。
この大学という場所は、全国各地から、狭き門を勝ち抜いてきたものだけが学べる場所だ。
故に、みんなどこか大人びていて、誇らしげで……なんだかキラキラしている。
いくら見た目が大人っぽくみえても、中身が高校生の俺には居心地が悪い。
翔みたいに去年まで高校生だった人たちもいるはずなのに、まるで別世界だ。
この中に胸を張って混ざりたいと、少しだけ思うけど……あいにく翔の大学は、超がつくほどの難関大学。
今の俺の頭じゃ到底無理だよな……。
少しだけ、どよんとしながら、はぁ、とため息をついたら。
「こんにちは」
横からとびこんできた声に、え?と目をやると、傍らに背の高い男子学生が立っていた。
「君、時々ここに来てるよねーどこの学部?」
「あ……えっと……」
どうしよう。
なんて、答えたらいいだろう。
てか、翔は、話しかけられたら、無視をしろって言うけど、無理だよ、これ。
「俺ねー、法学部の山下っての。ねぇ、サークルどこ?かけもちでいーからさ、うち来ない?」
「えっと……」
「テニスなんだけどさー、男少なくて困ってんの」
「……」
「もうすぐ学祭だからさ、イケメン探しててー」
「そう……ですか」
いや、これやばいやつ。
絶対、翔が怒るやつ!
「だから…」
「いえ、あの……」
「すんませーん。ちょっといいすか」
俺たちの会話に、後ろから爽やかな声がわりこみ、トレーを持った翔が現れた。
「お、こちらもイケメン」
山下さんが、大袈裟におどけてみせたら、翔はにこやかに礼をして、テーブルにトレーを置いた。
「すんません、こいつ俺の連れなんで。俺と同じサークル入ってるんで。駄目っす」
「えーほんじゃ、あなたも一緒にどぉ?テニス」
食い下がる山下さんを、「すみません。先輩に殺されるんで」と翔は一蹴した。
