
キラキラ
第34章 バースト9
「そっかー。残念。まぁ、また気がかわったら知らせてね~」
後ろ髪をひかれるように、何度もこちらを振り返り手をふる山下さん。
長い茶髪の髪が、チャラチャラした感じだけど、この学校にいるってことは、頭いーんだろうなぁ。
思ったより人のよさそうな彼の笑顔が無視できず、ぺこっとお辞儀をしたら、
「礼なんかしないでいい」
不機嫌まるだしな顔で、翔が切ってすてた。
「……話しかけられても無視しろっつったよな?」
「……うん……」
「あんなの相手にしなくていいからな」
「……うん」
なかなか無茶苦茶なことを言われてるようだけど……これも翔のヤキモチなんだよね。
俺はニヤニヤしそうになる顔を、懸命にもとに戻した。
つきあい始めの頃は、機嫌の悪くなる翔にオロオロしたものだけど、今じゃ俺も慣れたもの。
俺は、話題をかえるように、トレーの上を見つめた。
「……どうしてこのチョイス?」
おかわりはいらないって言ったのに、翔の持ってきたトレーには、アイスコーヒーとアイスティーと……パンケーキ。
「……食いたかったから」
頭使うと腹減るんだよ……、と、翔がちょっと口を尖らせて、フォークを手に取り俺に渡してきた。
「お前とはんぶんこしようと思って。でも、パンケーキ食ったら、口パッサパサになるかなと思って」
で、俺用のおかわりのアイスティーなんだ。
「……以心伝心だね」
「え?」
小さく呟いた声は、翔に拾われなかったみたいだけど。
時々、翔にはテレパスの能力があるんじゃないかなって思っちゃう。
生クリームを口に運びながら、うんまっと漏らす声に、俺も遠慮なくふわふわのパンケーキを堪能した。
