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キラキラ

第34章 バースト9


「夕飯何食ったんだ?」


翔が聞くと、かずは、マグカップの中身をふうふうする仕草をとめて、スパゲッティと、答えた。


「相葉くん、ナポリタンが大好きなんだって。ファミレスって意外とおいしーよ」

「そっか。相葉くん元気か?」

「うん、すっごく」


そのかずの言い方が面白くて、俺は横になったままくすくす笑ってしまう。
雅紀とはクラスが離れてしまったから、今までみたいにつるんでるわけじゃないのだが、たまに廊下でバッタリ会うと、すぐにかずの話題になる。

俺が大野家に泊まりにいってるのがうらやましくてしょうがないみたいだ。

そうだ。かずに、ちゃんと牛乳を飲めよって伝えてって言われてたんだった。

カフェオレならちょうどよかったな。

そんなことを考えながら、じっと見てると、かずが、なあに?というような目で俺を見るから、俺は小さく、なんでもない、と首を振った。


色が白くて細くて。
仔犬のような茶色い瞳は、みずみずしくて。

かずは、雅紀とつきあうようになってから、ほんとになんだか可愛らしくなってきた。

……俺には鬼の家庭教師だけど。



「そろそろ飲み頃だぞ」

「あ……うん」


翔に、ほどよく冷めたマグカップを勧められ、俺はそろそろと体を起こした。
痛いけど怠いけど、できるだけ普通に見えるように頑張って。
でも、そんな俺の苦労を踏みにじるように、かずがぽつりともらす。


「……痛そう。翔さん、もっと優しくしたげないと」


………いやいや、直球だな!


固まった俺をよそに、翔が事も無げに答えた。


「俺はいつでも優しいぞ?そんなに無茶したつもりもないし……」

「潤くん我慢強いもん」

「……やっぱそうか?」

「そうだよ。痛いなんて言えっこないって」


…………ちょっと、もしもし。

……俺が唖然としてるのをよそに、二人はどんどん際どい話を展開してゆく。


「いや……つかさ。あれってさ、どれくらい痛いの?」

「……試してみたら?」

「俺が?されんの?誰に?」

「そりゃ潤くんじゃない?」

「いやぁ……想像できねぇわ」



………………!


「 ちょっと黙ってくんない?!!」


俺は、たまらずに怒鳴ってその会話を遮った。

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