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キラキラ

第5章 hungry

「櫻井に会いに体育館行ったのに、いないからさ。相葉に聞いたら、ここだっていうから」

大野さんは、興奮した面持ちで歩み寄ってきた。

「いや、めっちゃ上手………俺、感動した」

何度も感心したように繰り返す大野さん。

照れ臭いからやめてほしい………俺、どんな顔して弾いてたかな。

顔が熱くなる………。

……ん?

今、大野さん俺に会いにきたって言った??


「………俺に、何か用事ですか?」

「うん。ちょっとつきあってほしくて」

今度は大野さんが照れ臭そうに笑う。

(ツキアッテホシクテ)

その言葉だけで、心臓がどくどくと鳴り出す。
意味は違うのに、大野さんからの言葉というだけで。

俺、重症だ。


「明日の土曜日は、部活ある?」

首をかしげて、おうかがいポーズ。
………無意識でやってるなら、犯罪だ。 

俺は、ばれないように、呼吸を整える。

「はい………午前中だけですが」

「昼からは?暇?」

「………はい」

「良かった。じゃあ、買い物行きたいんだけど、つきあってくんない?まだこっちの方はわからなくて」

血液が一気に逆流したかと思った。

買い物?!

………俺と?!

ヤバイ。

超うれしい…………!

「いいですよ」

「良かった。ありがとう。ばあちゃんの誕生日が、もう少しなんだ」

大野さんが、ここにいるのは、おばあちゃんのおかげという話をこないだ聞いたばかりだ。

祝ってあげたい気持ちは、すごく分かる。
力になってあげたい。

「あとで、連絡先教えてな。………でさ。もうひとついい?」

「はい」

俺は、にやにやしそうな気持ちをおさえきれず、笑顔で返事をした。
すると、大野さんは、またもや、綺麗な顔で爆弾を投下してきた。


「リクエストしていい? ピアノ。実は、今日は俺の誕生日だったりするんだ。俺のために一曲弾いてよ」

………この人は、俺の気持ちを、実は知ってて、こういうセリフを言ってるんだろうか、と疑いたくなる。

煽られてるとしか思えない………。

胸の引き出しをこじあけられてる気分だ。

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