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キラキラ

第34章 バースト9


こら、と、ぎゅっと手の甲をつねると、翔は、ちぇっ……と呟いて不満そうに手を離した。

途端、玄関のドアがカチャリと開く音がして。
思わず顔を見合わせた。


「……ほら」


ね、と言わんばかりに翔をじろりと見ると、


「今日は智兄早いんだな……」


と、翔はあきらめたように俺の上からどいた。

のしかかられてた重さがなくなると、途端になんだか寂しくなる。
でも、なしくずしにコトに及んでしまったら、自分がどうなるかわからないから、ここは我慢だ。

……それでも、さっさと布団に戻るのも嫌だから、俺はそのまま、ころんと体ごと翔の方を向いた。

翔は寝そべったまま、タオルドライしたままの髪の毛をかきあげて、グシャグシャになるなぁ……と、呟いてる。


俺は、ちょっと気になってたことを尋ねた。


「ねぇ」

「ん……?」

「翔の大学もうすぐ学祭なの?」


さっき山下さんが言っていた台詞を思い出す。
学祭のための人数足りないからサークル入って、とか言ってた。


「ん?ああ……まあな」

「いつ?」

「来月」

「……行ってもいい?」

「ダメ」


さっきのお返しとばかりに、即答された。
翔のいるところにいたい、と、ただそれだけの理由で聞いたのに。


「……なんで?」


ウキウキしかけた気持ちが、しゅんと、しぼむ。


どうして?一緒に楽しみたいだけなのに。
やっぱり、俺は邪魔なんだろうか?


俺が、すごくがっかりした様子に気がついたようで、翔は慌てて半身を起こして、俺をのぞきこんできた。


「違う違う。お前が嫌とかそういうわけじゃない」

「じゃあ、どういう…意味?」


口を尖らせて聞いてみたら、


「んなの、ナンパされるからに決まってるだろ?ずっと俺が隣にいて、お前に群がる虫たちを追い払えるわけじゃないからな」


さも、当然と言わんばかりに、翔は断言した。

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