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キラキラ

第6章 いっぱい  ~hungry ~

「完敗です。ありがとうございました」

言って、ペコリと頭をさげられる。

「やっぱ、先輩方は強いです。でも、すっげー、楽しかった」

汗だらけの顔。
あごから、ポトリとおちそうになる汗を、肩口でふいて、笑う二宮。

そんな直球で言われると嬉しいぞ。

俺は、つられて、ふふっと笑う。

「おまえも、よくやったよ? 正直驚いた」

「そうですか?」

二宮が嬉しそうに言う。

「あの即席チームまとめてたもんなあ。俺も、お前にマークされてたら、あんだけ動けてるかわかんねーわ」

翔ちゃんも、隣で肩をすくめた。

そうだよな。

一年生でこれは、結構な逸材。
先々楽しみだ。


………そんなことより。


「でさ、おまえ、足………」

「………そんな分かりやすかったですか? おかしいな………」

キャプテンにもばれてたんですよね………と、口を尖らせて、二宮は視線を自分の足に向けた。

「痛むのか?」

「………少しだけです」

「ちょっと座れ」

翔ちゃんが二宮にその場に座るように促す。

「どれ?」

俺は、二宮のバッシュを脱がし、靴下をまくった。汗ばんだ白い足首が現れた。

これは、本当に、野郎の足かよ?ってくらい、細くて白くて、すべすべの足に、ちょっとどぎまぎする。

「あー………ちょっと腫れてんじゃん」

横から冷静な翔ちゃんがため息をついた。

「あん時だろ? あの吹っ飛ばされた」

「………はい」

二宮は、決まり悪そうに頷く。
試合中、二宮と、二年のでかいセンターが、接触した場面があった。細っこい二宮は、まんまと吹っ飛ばされて、床に転がった。でも、そのあとすぐ、立ち上がったから、気にしなかったんだけど。

「マネージャーが、コールドスプレー持ってっから、やってもらえって、キャプテンに言われたんで。大丈夫です」

言って、立ち上がろうとして、よろけた二宮の腕を、慌ててつかんだ。

そして、その二の腕の細さにも、驚く俺。

なんだ、この華奢な体は。

「あ……すみません」

「いや。いいからお前座っとけよ」

俺は、体をそのまま押さえて、二宮を再び座らせた。


「てか松潤まだいるんじゃね?」

翔ちゃんが、体育館備え付けのでっかい時計をみやって、呟いた。 

養護教諭の松本潤こと、松潤。

そだな。湿布のひとつもしてもらった方がいいかもな。



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