
キラキラ
第35章 屋烏之愛
そして、そのまま、無言でぐいっと抱き寄せられる。
「……!」
一瞬で松本の力強い腕の中。
ふわりと彼の香りに包まれる。
「カズ……」
ぎゅうっと抱き締められて、お互いの胸板がぴたりとくっついた。
俺の暴れまわる心臓の音が、聞こえるんじゃないか、と思った。
俺はそっと腕をあげて、松本の背中のシャツを掴んだ。
…もう俺は自分の気持ちを知ってる。
俺はこの人が好きだ。
少し汗で湿ってるそれすら、なんだかドキドキした。
松本は優しく俺の後頭部を撫でながら、いとおしそうにもう一度呟いた。
「……カズ」
「……はい」
小さく返事をする。
「お前は俺のものだろう……?」
「……そうですよ」
そこで松本は、抱き締める腕にいっそう力を込めた。
「じゃあ……隙をみせんな」
「…………」
「他人に、触られるな」
「…………」
「約束してくれ」
昼間の事を言ってるのだと思った。
あれね、すごく怖かったけど……
「でも……松本さんは助けに来てくれた」
「…………」
「……めちゃめちゃ、かっこ良かったです」
「…………ばかやろう。そんなの結果論だ」
松本は、俺の頬に自分の頬を寄せてきた。耳の後ろの匂いをかがれてるみたいで、くすぐったくて肩をすくめた。
俺はフフッと、笑って自分からぎゅっと抱きついた。
「…惚れ直しました」
