
キラキラ
第35章 屋烏之愛
*******
四時間目が終わって、いつものように裏庭に行こうと、弁当を持って歩いてると、角から曲がってきた人物とぶつかりそうになった。
「おっ……と」
校内履きの青いラインに、上級生だと気がつき、すみません、と、とっさに謝ろうとしたら、
「あれ」
柔らかな声がして目をあげる。
「二宮じゃん……」
「大野……せんばい」
ズボンのポッケに手をつっこんで、にこりと笑ってる。
いつだったか渡り廊下で出会ったときは、恐ろしく冷たかったのに、今日はなんだか雰囲気が柔らかい。
俺は、戸惑いながら、ぺこりと礼をした。
「体育大会以来だな」
「はい……」
「かわりないか」
「はい……」
「潤とはうまくやってるか」
「は……あ、はい……」
思わず赤くなったら、大野は楽しそうに声をあげて笑った。
あの日、櫻井は自分のものだと、発言をした大野。
揺るぎない瞳で、きっぱりとその場にいた全員に宣言したその姿は、なんだかとてもかっこよかった。
そして、歩いて行く大野のうしろを、小走りで追いかける櫻井は可愛らしかった。
あの日は、あらゆることがありすぎて、そこまで考えれなかったけれど、後日改めて思えば、初めて会ったときから感じていた、二人の間のなんともいえない親密な空気は、こういうことだったのか、と妙に合点がいった。
大野はともかく、あの日以来、櫻井を怖いと思わなくなったし。
「あの……いろいろありがとうございました。なかなか御礼が言えなくて」
「礼なら、翔くんに言えよ。あいつが一人でお前のところに、乗り込んでいったんだから」
「……はい」
俺は、こくりとうなずいた。
