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キラキラ

第7章 ナチュラル

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無言のまま駐車場までならんで歩き、マネージャーの車に乗り込むと、翔くんも続けて入ってきた。
ハンドルを握るマネージャーが、振り返って、確認してきた。

「櫻井さんは今日は、松本さん家に寄るんですか?」

「うん。よろしく」

翔くんが、短く答えてニコリとする。
その受け答えを見るだけで、俺は嬉しくなる。

たとえ、楽屋からここまで、会話がなくても、俺んちに来ようとしてるってことは、少しは気持ちを軟化させる気があるってことだよね。

走り出した車の窓の外を見るふりをして、ガラスにうつった翔くんを見る。
反対側の窓に肩肘をついて、人差し指で唇をいじりながら、窓の外に視線をやる翔くんは、綺麗だ。

………何を思ってるんだろう。

翔くんから目を離せないまま、小さく息を吐いた。


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会話もないまま、部屋に入った。

ご飯食べながら一杯飲んだら、ちょっと話もできるかな。

………夕飯は湯豆腐にしようか。


冷蔵庫の中身を思い浮かべ、キッチンに入る。
土鍋はどこにしまったっけ?と、頭上の扉をあけて探しながら、

「翔くんは、休んで…て……あれ?」



今、目の前に立ってた翔くんがいない。

あれ?、と、視線をめぐらしてると、後ろからふわりと腕がまわってきた。

ゆっくり、俺のお腹の前で組まれる腕。
背中があたたかくなると同時に、肩にコトンと頭がのる。

いっきに心臓が跳ね上がった。

なに?………なんのアクション?

「………翔………くん?」

「………………潤」

「………………なに?」

「ちょっとつきあえ」

「え?」

思わず聞き返すと、ぐいっと肩を反転させられ、
あっという間に、翔くんに顎をつかまれ唇をふさがれる。

「………っ」

至近距離にある目を閉じた翔くんの顔。

重ねるだけの唇が少し震えてる。

時間にして数秒のことだけど、思わず息をとめてたせいか、唇を離されたと同時に、大きく深呼吸をしてしまった。

戸惑って問う。
 
「………どしたの」

「………俺、あの役できっかな………って試してんの」

困ったように微笑んだ翔くんは、自分からしかけたくせに、恥ずかしいのか頬が赤い。





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