キラキラ
第7章 ナチュラル
ドキドキする胸をおさえながら翔くんを見つめた。
翔くんは、長い前髪の間から、大きな目でじっとこちらを見つめ返してくる。
翔くんからしかけてきたキスに、胸が痛いくらい心臓がどくどく鳴ってる。
拙い感じが可愛すぎる。
………今すぐにでも押し倒したい。
溢れそうな思いと戦ってる俺に、翔くんは、
「なあ。キスって、客観的にどうやったら綺麗にみえるもん?」
………芝居の話を始めた。
「………」
これ、ひょっとして翔くんは、あの台本どおりのことを今からひとつひとつやろうとしてんの⁉
「えっと………」
………聞きたいけど、なんだか怖くて聞けない。
とりあえず、俺はカメラにうつる角度や立ち位置の関係を説明する。
そうだよ。
俺は、キスシーンの場数なら、嵐の誰よりも踏んでる。
実際にキスしなくたって、してるフリだけで、リアルに見える方法だって知ってる。
でもさ。
仕事から帰ってきて、すぐ、………それもメシ食う前にしなくてもいいんじゃない?って思うのは俺だけ?
でも、あまりに真剣に翔くんが頷いて俺の話を聞いてるから、それも言えない。
俺は、女優さんを抱き寄せる腕の位置なんかの説明まで始めた。
リーダーのお願いを思い出す。
【翔ちゃんをオトコにして。】
だって。
要は、ラブシーンの自信をつけさせればいいんだろ?
「ちょっとやってみ」
俺は、翔くんに向き直り、腕を広げた。
翔くんは、一瞬え?って顔をしたけど、素直に頷いて、俺の腰をぐいっと抱き寄せた。
俺は広げた手を、翔くんの首にまきつける。
目の前に翔くんの整った顔。
ちょっと緊張してるのか笑顔が強ばってる………って、相手俺だし!
今さら緊張なんかすんなよ。
こっちまで、なんだか気恥ずかしくなる………。
首を傾けて、翔くんの唇が近づいてる。
俺は目を閉じた。
柔らかい感触。
受け身の気分ってこんな感じなんだ。
翔くんが俺の唇をついばむように、角度をかえて重ねてくる。
………充分じゃん。
甘いじゃん………ってか、俺、やばい。
………すっごい翔くんにときめいてる。
ゆっくり唇を離されてみつめあう。
翔くんは、大きな瞳を細めて、笑った。
「俺、今日は、潤をリードしてみるから」
…………ん?
………ちょっと待て。
練習ってわけじゃなさそうだぞ。