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キラキラ

第37章 寵愛一身


「ほら。だから、これやるよ」


藤井は、手にしてたサンドイッチを、俺の手にもたせた。


「……ありがとうございます」


ニッコリ笑って頭を下げると、藤井は少しだけ赤くなり、いや……と、いった。

すかさず、


「カズ」


大きくはないが、はっきりとした声が俺の名を呼び、藤井が、ハッとした顔になった。
二人で向かいのベンチを見やると、足を組んだ松本が、じっとこちらを見ていて、来い、と、手招きしてる。

こぇー……という、藤井の声にならないような小さなつぶやきに苦笑しながら、俺は、とことこと松本のそばによる。

すると、松本は相葉と反対側のスペースを顎で指し、座るように促した。

俺が、ちょんと座ると、松本は俺の肩を抱く。
そうされるとなんだかホッとする自分がいた。
今までのような過度なスキンシップに比べると、全然軽いけど、触れられると安心する。


「今日は?帰り寄りたいとこあるか?」

「……今日は……欲しいマンガがあるから本屋に行きたいです」

「わかった。じゃ、俺も買う」

「……こないだもなんか買ってませんでした?」

「あれは集めてる単行本。今日のは雑誌だ」

「……そうですか」


ふふっと笑って見上げたら、松本も驚くほど優しい瞳で俺をみていた。


……変だと思うのは……やはり気のせいなんだろうか。

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