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キラキラ

第37章 寵愛一身


なんだか……


ちょっと胸が痛くなるような眼差しに、俺は、こくんと息をのむ。

初めて見る上田の姿から、目を離せなかった。

彼にはいつもの堂々とした俺様なオーラはなく、それは……そう、まるで切ない思いを胸に押し込めている、一人のただの男にみえた。

しばらく観察していてもそのひたむきな視線は、櫻井から決してはずされることはない。


……上田って、もしかして……


ドキドキしながら、さらによく見ようと身を乗り出したとき。



「……二宮……!あてられてるぞ」


後ろの席のやつの囁きに、ハッとして顔をもとに戻せば、こちらをじっとみている教師と目があった。

やべ……

あわてて背筋をのばす。


指定されたページを読み上げながら、俺は、今の上田の姿が頭から離れなかった。

前に、女には興味ないって言ってたけど。
そのときはそのまま流したけど。

わかる。
自分も大切に想う人ができたからこそわかる。


きっと上田の想い人は、櫻井だ。


櫻井には大野がいるのは周知の事実。
だからそれらを分かっていての……想いなのだろう。


那須のときといい……。
どうして、想いがうまくいく人、いかない人がでてくるのかな。


……恋をする気持ちの始まりは、誰にもとめられないからこそ、なんだか切ない。

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