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キラキラ

第7章 ナチュラル

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ずっと考えてた。
俺にとって、このハードルの高い役をどう消化しようかなって。

何が不安かっていったら、結局俺のキャラクターにない要素を持つ人間を演じることだ。

自分じゃない誰かになれるなんて、そこが、芝居の醍醐味だって、言われそうだが、まっさらで取り組もうなんて、あいにく俺はそこまで器用じゃない。

きちんと下準備して、情報を手元において。
少しでも役を自分にリンクさせてから、でないと、感情の動きも想像できないじゃん。

今回の役は、いうなれば、プレイボーイ役。
女性の扱いが上手で、口がうまくて、手が早い。

何一つ、俺とかぶらない。
むしろ、今は常に受け身だから、………雄の感覚も忘れがちだ。


だから、決めた。

………今日は、潤が俺にしてることを、俺が潤にしてみよう。

主導権。握ってみよう。





なんて、思って挑んでみたけど、潤を後ろから抱きしめただけで、心臓が飛び出そうなくらい、高鳴った。

温かくて広い背中。
一見華奢に見えるけど、俺より筋肉質で。
ふわりと、首筋からは潤の香水の香りがする。

翔くん…?と、戸惑う声。

潤の肩に頭をのせて気持ちを落ち着ける。

これ、惚れてる相手にするの無理だろ………練習になんねぇよ………。

気をとりなおして、戸惑う潤の口をふさいでみたものの。
ドキドキするばかりで、俺にも余裕がない。





空気を読んだ潤が、「やってみ」って、手を広げてきた。

頷いて、潤の腰をぐいっと抱き寄せる。

潤の瞳が少し揺れた。
言われるままに唇をよせて、優しく口づけた。

いつも、されてる側だけど、今日の主導権は俺。

いつも潤にされる、俺が好きなキスをしてみた。
何度も角度をかえて、ついばむように………。
柔らかい唇を味わうように。

応える潤がちょっとうっとりした目をしたのを、見逃さない。

お………いい感じ?









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