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キラキラ

第8章 バースト

意味がわからない体験から、そんなに日がたたずして、また俺の身に不可解なことがおこる。

それは、学校から下校中のこと。

いつになくぼうっとして歩いてたら、突然耳に響くクラクション。
はっと顔をあげたら、至近距離に車が迫ってた。

轢かれる………!

とっさに目をつぶり体を固くした。

カッと体が燃えるように熱くなり…………、頭の中が白くなった。

クラリとする。


「………え…っ?!」

次の瞬間、俺は自宅の前にいた。

ペタりとその場に座り込む。

心臓がドキドキしてる。
轢かれる寸前だった映像がフラッシュバックする。

マジで死んだかと思った。



…………でも、今自分がいるのは、自宅の前だ。

コンクリートに触れる手のひらがリアルで。


どういうことだよ…………?

震えがとまらないからだを抱きしめて、俺は母さんが仕事から帰ってきて声をかけてくれるまでの間、自宅前の道路に座り込んで動けなかった。



***** ***** *****



…………瞬間移動



文字にすると、現実離れした感が増すが、まぎれもなく、それだった。

映画や漫画の世界ではよく耳にするが、よもや、自分の身におきるなんて、始めはどうしたって信じられなかった。

寝ぼけてたんだろうか。
一時的な記憶喪失だろうか。

いろいろ考えた。
調べた。

そんなことあるわけがない、と笑い飛ばすのは簡単だが、実際に体験したことが真実だと、一番自分で分かる。

実際に、そのあとも何回か体験したのだ。

はじめこそ戸惑っていたが、回を重ねるうちに、段々、ああ、またか、と冷静になってきた。

分かったのは自分の感情が高ぶったときにおこるということ。

怒ったとき、怖かったとき、驚いたとき。
移動する先は様々だが、危険な場所に動くことは今のところ、ない。範囲もせいぜい生活圏内だから助かった。

そのうえでの結論だった。

そして自分でいうのもなんだが、俺は賢い子供だった。
本能的に、これはあまり知られてはならないことだと感じた。

人は自分の常識から、はずれたことをする人間を排除する傾向がある。
もしくは、人寄せパンダよろしく見せ物にされるか、そのどちらかだ。

俺は、黙っていることにした。
誰にも…………誰にも言わないことにした。



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