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キラキラ

第37章 寵愛一身


「途中でやめないって……言ったじゃないですか……」


松本の腕をつかむ。

すると、彼は、うん、と頷いた。


「でも……カズが泣くほど辛いのに、それでも無理矢理は、できない」


きっぱりと言い切る松本。

体は、まだ、俺を求めた形のままなのに、理性でそれをねじ伏せてるのだろう。
俺があごをひいて、そこを見たのに気づいたのか、松本は照れるように腰を引いた。


「……少し休めば落ち着くから」

「あの……俺、別に辛くないです」


俺は、あわてて否定した。

こんなに俺のことを思ってくれてる人に、我慢なんてさせたくない。


「でも……」


恥ずかしいけど、自分の気持ちはその都度ちゃんと言っていかないと、すれ違うことは、学習済みだ。

俺は、ぼそぼそと言った。


「あの……気持ちよすぎただけ……なんです」

「……え?」

「感じすぎちゃって……身を任せていいのか、どうしていいか怖かっただけで」

「……カズ」

「辛くないです。痛くもない……」

「…………」

「だか……ら……っん」


ギュッと温かい胸に抱き込まれる。
俺も下から手を伸ばし、抱き止めるように松本の背中に腕をのばした。

平らな胸がぴたりとくっつく。
心臓の音が重なりあうよう。


安心する……


こうしてると、さっきの気持ちよさの波にのまれても、この人のそばにいたら大丈夫だなと思えるようになった。

俺がどれだけわけわかんなくなって乱れても、きっと受け止めてくれるよね。

松本の体温と香りを感じてると、迷っていた素振りをみせてた松本が、小さく問いかけた。



「…………なら…このまま…俺と、繋がる?」



……もちろん。



「……はい……きて」


俺は、ギュっと松本にしがみついた。

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