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キラキラ

第37章 寵愛一身


キューピッド役なんて御免だ。

それでも無視するわけにも行かず、俺は無表情のまま黙って立ち止まった。

あまりメイクをしていない、どちらかといえば清楚なタイプ。
松本に渡そうとしているのであろう手紙を握りしめるその手に、必死な想いが感じられて、ちょっとばかり同情する心がうまれそうになる。

いかにも遊んでます、みたいな子は論外だけど。

自分の想いを伝えたい、と頑張る子を笑う気にはなれない。

……でも、俺は関わらない。

この手紙を松本に渡して?とでもいうんだろ、どうせ。


「……自分で渡したら。松本さんならもうすぐ来るよ」


今、自分に出来る限りの優しい口調を心がけて、俺はその場を立ち去ろうとした。

すると、


「二宮くん……」


その子が小さく口を開いた。


「あの……好きです。これ……あたしの電話番号です。つきあってもらえませんか」


…………


「…………え」


その子の潤んだ瞳は、俺を見つめていた。
俺は、一瞬何を言ってるのかわからなかった。


「…………俺?」

「はい」


その子はコクンと頷いた。

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