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キラキラ

第37章 寵愛一身


…………マジか。


認めたくないが、可愛らしいといわれるこの外見のせいか、生まれてこのかた、男に告白されたことはあっても、女に告白されたことはない。

俺は、唖然としてその場に立ちすくんだ。

女子高生も、真っ赤な顔で手紙を握りしめてうつむいてる。


……え、これなんていったらいいの?


准一みたいなぐいぐいくるタイプの方があしらいやすい。
つついたら泣きそうなこんな子、どうやって…


「あの……」


迷っていたら、後ろから突然ガバッと肩を抱かれた。
ふわりと大好きな香りに包まれたと思ったら、


「悪いな。こいつ、恋人いんだよ」


朗らかに宣言した松本に、俺はその場から連れ出された。

慌てて振り返ると、突然のことに取り残され、ぽかんとしてる女子高生。
俺は、ごめんね、というように頭をさげて、ぐいぐい引っ張って行く松本に必死でついていった。

そのおそろしく早い歩調に、途中で根をあげる。


「じ……潤くん……まって」


はぁはぁ言いながら訴えると、松本はその足の速度を少し緩めた。
でも俺の腕は、ぎゅっと握ったまま。
そうして、松本は、少し拗ねた口調で、俺を見下ろした。

「カズ……」

「……はい」

「あんなのありえない」

「……はい?」

「秒で断れ」

「は……」


…………秒で。


俺は、さっきの女子高生のように、ぽかんとしてしまった。


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