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キラキラ

第8章 バースト

そこへ、

「おーい、相葉~」

と、クラスメートからの声。
見れば、入り口のドア付近から、手招きして廊下を指してるやつがいる。

「……? ちょっといってくる」

雅紀が、訝しげに立ち上がった。

一人になった俺は、うーん、と伸びをして肩をならす。

ジャケットもそろそろ暑くなってきた。衣替えも、もうすぐだな。
ネクタイも窮屈だし、早いところ半袖になりてぇ…………。

窓から外を眺めて、初夏の薫りのする風を感じ、目を閉じた。

しばらくして、ガタガタっていう音に目を開けると、ちょっと困った顔の雅紀が、戻ってきてた。

「早いじゃん。どうした?」

「…………呼び出された」

「誰に?」

「三年」

「は?なんで」

「分からない」

「いつ?どこ?」

「放課後だって。体育倉庫裏」

なんだ、それ…………。
ボコる気満々じゃん。

雅紀は怯えきった顔をしてる。

「…………心当たりは?」

「だから、ないってば!」

雅紀が、泣きそうな顔をした。

だよなあ。本来、こんなにフツーのこいつが目をつけられるわけないよな。

「…………ほっとけよ。そんなの行く必要ねえよ」 

「でも、行きますって言っちゃった…………」
 
「はあ??」

目を丸くして聞き返す。

何いってんだ、こいつ!

だって、すげえ迫力だったんだもんっと、雅紀は、騒いでる。

「どうしよう。ねえ、俺どうしたらいい??!」

雅紀が、涙目で訴えてくる。

いや………どうもこうも。

俺ならガン無視するけどなあ………。

売られた喧嘩をいちいち買ってたら、身がもたねえし。

でも、喧嘩のケの字もしたことのなさそうな、平和主義丸出しなこいつに、いきなりふっかけてくるだろうか?

呼び出される理由が謎だよな。

俺は、うーん、と眉をしかめて腕組みした。

「…………ま、じゃあとりあえず行って、やばかったら逃げろ」

「俺一人で?」

「たりめーだろ」

「………潤、一緒にきてくんないの?」

マジかよ。

「………………………」

めんどくさいことに巻き込まれそうな予感しかしない。

「………頼むよ…」

…………そんな目すんな。

「…………」

ヤバイ予感しかしないぞ。

「なあなあ」

「…………分かったよ」

涙目の雅紀に根負けした。

面倒になったら、こいつひきずって逃げればいい


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