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キラキラ

第38章 バースト11


静まりかえる扉をそっとノックする。

はい、という小さな応答を確認して、

「入るよ」

と、俺はトレー片手にかずの部屋に入った。

廊下と、さほどかわらない室温。
勉強中、眠たくなりそうだから、と暖房の温度は最小限におさえられているためだ。

加湿器の稼働音が部屋の隅でしている。

猫背がこちらを振り返った。

その顔は青白い。
あまり寝てないともいってた。

大丈夫かよ……。

根をつめすぎじゃないかと心配になる。
自分がどうしてたかなんて、とうに忘れたものだから、無茶はするなよ、と思うばかりだ。

俺は湯気のたつマグカップを、そっとかずの机のはしにおいた。


「ココア持ってきた」

「あ……ありがとう」

「智兄が、かずにって作ったんだぞ」

「ほんと?」


かずはニコリとして、智さんのココアって、なぜか不思議と美味しいんだよなぁ……と、しみじみ呟いた。


「……なぜかって(笑)」


俺は、笑って、さっき焼いたばかりのクッキーの皿をおいてやる。


「糖分補給しないと頭がまわんないぞ」

「わぁ……ありがと」

かずがふわりと笑った。

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