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キラキラ

第38章 バースト11


「どうだ。わからないとこはないか」


開いたかずのノートには数式がびっしりと書いてある。
頑張ってるな、と感心しながら、自分のときのことを思いだして懐かしく思う。

受験勉強はしんどかったけど、つまりは自分との戦い。
人生で自分をあれだけ追い込むことは、これから先そうそうないだろうことを思えば、必要な期間だったのだ、とも……今なら思える。

きっと、今だけだぞ、と、かずに心でエールを送る。

そんなかずはクッキーをかじり、美味しい、と笑った。
そして、嬉しそうに俺をふりあおいだ。

「……今のところは大丈夫。翔さんがついててくれると心強いよ」

「……そうか。無理すんなよ」

「今、無理しなくて、いつ無理すんの」

「……それもそうか」


俺は、かずの頭をポンポンとたたいた。


「…………頑張れ」

「うん。ありがと」


こういうときは、月並みな言葉しかかけれないものだな……と、俺はかずの部屋を出た。

相葉くんとのデートも我慢して、受験を最優先にしているかず。
模試の合否判定は、そんなに悪くないらしいし、あとは最後の詰めだけだ。

無事にすべてがうまくいけば、春には、またみんなでどこかに行きたい。

……お祝いだな。

そんなのんきなことを、俺は思っていた。

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