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キラキラ

第8章 バースト

そのとき。

突如、身体中の血が沸き立って逆流するような感覚に襲われた。

頭の中が白くそまってゆく。

注意深く生活していたから、最後に跳んだのはいつだったか。

忘れもしない。久しぶりに味わうこの感覚。

これ…………、瞬間移動する前兆だ!


やべっ………


俺は、焦った。

ダメだ。俺だけ跳んだら雅紀が一人になる…………!

跳べない………跳んだらダメだ…!

思わず目をぎゅっとつぶり、両腕で体を抱いた。
その場に前屈みになり膝をつく。

目の前が白くなってゆく。

心臓がドクドクと耳のそばで鳴り響いてる。

血が沸き上がる…………! 


「あ…………っ…………あああああっ」 


身体を抱きしめて、全力で叫んだ。

沸き上がるチカラをおさえこむ。

できるだろうか………っ!?

………跳ぶな、俺………っ!

上級生らが、突然叫びだした俺に、ぎょっとして注目した。



瞬間




「あ?おいっ!相葉どこ行った?!」

「逃げたのか?!」

「いや…………さっきまでここにいたんだけど…………消えた」

「何、言ってんだおまえ」

「マジマジ!」

上級生らが口々に怒鳴りあってるのが耳に届いて。


…………………我に返った。


気がつくと、俺は地面に倒れていた。

心臓が早鐘をうつ。

全身から汗が吹き出していた。

呼吸がうまくできない。

苦しいっ…………

はあ……っ……はあっと、激しく深呼吸を繰り返しながら…………安堵した。

………跳ばなかった。

良かった。

そして、周りの様子から、雅紀がうまく逃げれたらしきことにも、安心する。

だけど、あいつら、雅紀が消えたっつってるから、雅紀のやつ、ひょっとしたら俺のかわりに跳んだかな?
他人跳ばすなんて、そんな技、俺使えたっけ?


苦しい呼吸を縫いながら、ははっ………と笑みがこぼれた。

それにしても、体が鉛のように重い。
腕を上げることも、体を起こすこともかなわない。
倒れた姿勢から、起き上がることができない。

………ちょっと待て…これ、ヤバくね?

危険な状況にある自分に気がつく。

上級生らが、もめてる間に、つらっとこの場を去ってしまいたい。

なのに………。

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