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キラキラ

第38章 バースト11


まさかこんなたくさんの目があるまえで潤に跳ばせるわけにはいかない。

だが、この状態の智兄は歩けない。

こいつらの前で、目に見えるようなチカラを使わずにひとまずこの部屋を出る方法は。


「智さん」

「ああ……ありがとう」


潤が自分が着ていたダウンジャケットを脱いで、智兄に、はおらせたのを見た。

「大丈夫?」

「ああ……」

「智兄」


ほら、と、俺は智兄に背中を向ける。


「え……」

「ここをでるよ。おぶってくから」


潤も俺の思うことを理解したのか、智兄に肩を貸して、抱き起こし、俺の背中に智兄を寄りかからせた。
ここまでできたらあとは簡単だ。

俺はチカラで智兄を少し浮かべて、適度な重さに調整する。


「……重いだろ……」

「全然」

「……だろうな」


くくっと笑いあい、俺たちは連れだって部屋の出口に向かう。


「おい!ちょっと待て!」


足の動かないやつらがあわてて声をあらげる。


「……うるせえな」


俺はそいつらを一瞥して、一瞬だけ意識を電子機器にとばし、それらをすべてショートさせた。

そうして最後に、潤に目で促すと、潤は、うん、と頷いて、パソコンを蹴り飛ばした。
派手に画面が割れる。


「わあっ!」


研究所のやつらが悲痛な声をあげた。

俺は、怒鳴った。


「二度と、俺らの前にあらわれんな!!」


潤がとどめに、USBを踏み潰した。
バキバキっと軽い音がした。

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