
キラキラ
第8章 バースト
後ずさりする気分で、黙ってたら、翔と交代したやつは、俺の前にちょんと座った。
「じゃ、俺は、飲み物でも用意してくるか」
苦笑して、まかせた、と言い、翔はキッチンに消える。
そいつは、手早く残りの消毒をすませて、血がにじんでるところは、器用そうな指で絆創膏まで貼ってくれた。
確かに痛くない(笑)
「はい、できた」
ぺん、と傷の上に手を添えられる。
見た目は細いのに、手は子供みたいに丸くて、なんだか可愛い。
神経質そうだった印象だけど、笑ったら意外に人懐こくて。
「ありがとう…」
「どういたしまして」
救急箱に、いろいろしまいながら、そいつは、またにこりとした。
神妙な顔で、ソファーの端に座って成り行きを見守ってた、雅紀が、
「ごめんね…潤。痛そう………」
ポツリというから、
「もういいって言ってんだろ」
って、さらさらの髪の毛をクシャクシャしてやった。
嬉しそうに、へへへ、と笑ったのも束の間、雅紀はまた沈んだ表情になり、
「かずは、もう大丈夫なの?」
と聞いた。
かず??
俺がきょとんとすると、そいつ………かずは、しょうがねえな、というように苦笑した。
「大丈夫じゃないっていったら?」
「…………」
「嘘だよ。へーき」
雅紀が、また泣きそうな顔をする。
話がみえない!
そこへ、マグカップを両手に、翔がやってきた。
「智兄が作るココアは元気がでるよ」
言って、俺と雅紀に手渡してくれた。
「いただきます……」
受けとると、手のひらから、ぽかぽかと暖かくなる。甘い香りが鼻腔をくすぐり、緊張していた神経が休まっていくのを感じる。
口をつけたら、熱くもなく、ちょうどよかった。
口の中の傷にちょっとだけしみたけど、気にならないくらい、美味しい。
「うま…………」
続いてやってきたタレ目が、嬉しそうに、
「そ?よかった」
と、言った。
そして、手にしてたマグカップをかずと翔に渡し、あいてるソファーに座る。
翔も、その横に腰かけた。
「……んじゃ、自己紹介しよかな?俺は、大野智。26歳会社員。趣味は釣りと昼寝」
柔らかい口調と声の持ち主は、微笑んだ。
「で、こいつは、弟の翔。今、高校………えっと」
「三年」
「三年生だって(笑)」
…………兄弟か。
てか、翔は、俺より年上か!
