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キラキラ

第8章 バースト

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Sho


コーヒーメーカーから、コポコポと小気味いい音がたちだし、キッチンにいい匂いがたちこめはじめる頃、

「…………おはよ」

智兄が、眠そうな目をこすりながらリビングに入ってくる。

フワフワな髪の毛を、あっちこっちにはねさせて大きな欠伸をしている姿は、とてもとても26歳とは思えない。

「駅前のパン屋で、智兄の好きなクルミパン買ってきたよ。食う?」

「ん…………じゃ、ちょっとだけ」

いつも、朝ごはんはいらない、とコーヒーしか口にしない智兄だから、時々こうやって好物を買ってきては、無理矢理食べさせるのが、俺の役目。

だいたい、朝飯食わねえで、午前中動けるかっての。


スツールに座って、ぼうっとしてる智兄は、まだまだ夢の中っぽい。

智兄愛用の、パステルブルーのマグカップに、熱いコーヒーを注いで、

「ここ置いとくよ」

コトリと音をたてて、智兄の目の前に置いてあげると、

「…………ありがと」

ふにゃっと笑う智兄に、思わず笑みがこぼれる。

俺らを引っ張ってくれてる、頼りになる普段の長兄の顔とは、180度違う表情。

今から出勤準備をしていく間に、少しずつ鋭い顔になっていく。
そんな智兄の変化を見るのが好きだ。


時計を見上げると、七時になろうかというところ。

「かずは?」

「まだ」

「お………寝坊か?」

「…………なら、いいんだけどなあ」

嫌な予感がして、俺は、かずを起こしに部屋に向かった。

コンコンと軽くノックをして扉の外から声をかける。

「かず?起きてる?」

入るよ、と断って、うすぐらい部屋に足を踏み入れた。

部屋の奥にあるベッドで、丸いかたまりがもぞもぞ動いた。

「起きてるじゃん…………朝だぜ?」

声をかけて、布団をめくると、赤い顔をしたかずが、熱い息をついた。

「…………アタマ痛い」

ああ…………やっぱりな。
嫌な予感が的中した。

「………うん……熱いな」

額に手をやり、ため息をつく。

「昨日、ひさびさにチカラ使ったからかな?」

「…………わかんない」

かずは、また、ハア…………と苦しそうに息をはいた。

「うん。まあ、今日はゆっくり寝てな。早めに帰るよ」

額にやってた手を、髪の毛にやり、優しくすいてやる。

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