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キラキラ

第8章 バースト

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「…………あのっ…………」

今日の夕飯は、なんにしようかと主夫みたいなことを、考えながら学校の門をでたところで、聞き覚えのある声に足をとめた。

振りかえると、制服姿の潤が佇んでいた。
昨日はボロッボロの格好だったけど、これが通常のスタイルなのだろう。
ジャケットのそでをまくり、ネクタイをゆるめたちょいワルな格好が、妙に似合っている。

俺が、ブレザーの袖まくりあげたりしたら、智兄は目を剥くだろうな。 

「…………潤」  

「良かった。やっぱりこの学校だった」

ニコリと笑って、手に持ってた紙袋を差し出された。

「服返しにきたんだ。…………ありがとうございました」

昨日も思ったけど、潤は、笑顔が本当に素直でいい表情をしてて、それでいて澄んだ綺麗な瞳をしている。
ちょいワルな格好は、多分カモフラージュで、きっと根は真面目ないい子なんだろうな、と思う。

「ああ…………こんなのいつでもいいのに」

笑って、受けとる。

「よく学校分かったね?」

「制服覚えてたから。でも、あんまり自信なかったから、翔…………さんが本当にでてくるか、ちょっとドキドキして待ってました」

「校門前で? ずっと?」

潤の学校とは、二駅分くらい離れている。
午後の授業終わって、すぐに出てきたにしても…………

「五時間目のあと、早退しました」

「ダメだろ」

俺が言いたいことが分かったみたいで、すかさず
返してきた潤に、笑ってつっこんだ。

「…………なんか。会いたくて」

ポツリという潤に、ひかれるように顔をあげると、あ、というように潤が口を覆った。
思わず、心の声が出てしまった感じだった。

「あの……すみません」

「いいや。謝らないでよ」

柔らかく首をふる。
不安なんだな、可愛いなと、思う。

「じゃ、俺はこれで」

そそくさと踵をかえして帰っていこうとする潤の腕を、慌ててつかんで引き戻した。

「このあとあいてる?」

潤の瞳が揺れた。

「…………はい」

「じゃあ、うちおいで。ちょっと話そうよ」

「…………はい」

潤が、ニコリと笑った。

はにかむ笑顔が、可愛くて、ちょっと胸がドキリとした。


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