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キラキラ

第8章 バースト

しんどい…か。

………そうだったな。

周りに無関心を装うあまり、可愛くない子供を演じていたのは認める。



「だって。本気で怒れないし泣けないって。それって常に、自分を一歩ひいて見ないとダメだってことだろ?…………それって、すげえしんどいよ」




…………そうだよ。

自分が自分じゃないみたいで、苦しかった。

時々、ヤケクソで何もかもメチャクチャにしようかと、思うこともあったし。

いつも、自分の感情の動きを気にしてた。

…………つまらなかったな、ほんと。




「……………じゃあ、俺たちの前では、ほんとの潤でいれるね? 俺らは潤が消えても、驚かないしな(笑)」



「…………ですね」



胸が熱くなってきた。

目の前がぼやける。

…………分かってくれる人が、いるっていうことが、こんなにも嬉しい。



「…だから…………こうやって能力のこととか、何もかも話せる人ができて、嬉しいんです、俺」



語尾が震えたかも。

瞳に浮かんだ薄い涙の膜が、あふれてポロっとこぼれた。

嬉し泣き。

カッコ悪いな。俺。




突如



…………どくんと、心臓がなる。





「…………ぁ……」


………まずい。
久しぶりに泣いたら、これだ。

 
キンという音とともに、白い靄が頭の中を覆い始める。


「…………ほら、こうやって泣くとテキメンだ……」


自虐的に笑って、髪の毛に右手をつっこみ、ぎゅうっとつかむ。



翔が、異変に気付いた。




強い力で、肩をつかまれ、ぐいっと翔の方に体を向けさせられる。

「………翔…?」


「潤。俺の目みろ」


顔をあげると、射抜くような大きな瞳が、俺をまっすぐに捉えてる。


「いい機会だよ。コントロールの練習しよう」

「…………できねぇよ」

「できるよ」

言ってる間にも、周りの景色が、白く霞んでいく。

温かい手のひらが、目を覚まさせるように、俺の手をつかんだ。

「抵抗しないで。意識を委ねて。沸き上がるチカラ、感じるか?」


「…………あ…………」


「力任せにおさえつけたら、こないだみたいに、暴発する。蝋燭の火を静かに吹き消すイメージを持て」


重なる手のひらから、温かい翔のチカラが伝わってきた。


「俺の呼吸とあわせて」


翔の深い目の奥を、見つめる。








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