
キラキラ
第8章 バースト
コントロールっつったって…………
ドクドクと心臓の音が耳元でうるさいくらいの音をたててる。
できる気がしねえ…………
目の前にある翔の目をみつめ、言われるまま、深呼吸を繰り返す。
吸って………ゆっくり吐いて
だけど、翔の赤い唇がなにか言ってるのが、聞こえない。
そのうち聴覚も視覚も、白に奪われていく。
…………あ、無理だ…………跳ぶ…………
あきらめかけた瞬間、
「潤!」
重ねられた手にぎゅうっと力がこもり、翔の声が、突然耳元で聞こえて、我にかえった。
同時に、身体中をかけめぐってた嵐のような血流の流れが、ふっとおさまる。
まるで押し寄せる濁流が、せきとめられるかのように。
…………沸き上がるチカラが静かに消えてく。
手のひらからは、温かいなにかがずっとずっと流れ込んできて。
「…………潤?」
「…………」
「潤」
優しい声と、ピタピタと頬を触られる感覚に、心の焦点があった。
「…………翔」
目の前数センチの距離に、翔の顔があった。
大きな瞳に、心配そうな色をたたえて。
「…………大丈夫か?」
「…………ぁ…………うん」
「…………やったじゃん。跳ばなかったよ?」
「………もっかい自分でやれって言われても、できねぇけど…………」
嬉しそうな翔に、苦笑して返す。
若干、気だるいが、こないだのように動けなくなるようなことはない。
白い世界から、もとの視界に戻れたのは初めてだった。
チカラを消すイメージ、か。
…………翔のおかげだな。
ふときづけば、翔にのしかかられるような体勢で、顔をのぞきこまれてる。
片手は指をからませて握られたまま。
嬉しそうな瞳が、戸惑ってる俺をうつしてる。
かあっと顔が熱くなった。
なんだ、これ!
また跳ぶぞ!
「…あ……ありがとう。翔…………さん、手」
呟くと、「ああ…………」と、いい、翔は笑って手を離した。
そして立ち上がり、俺をみてクスリと笑みを浮かべ、
「俺のこと、翔って、呼んでいいよ」
「え」
「あと、タメ語でいいから」
翔は、はははっと笑って、キッチンに消えた。
