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キラキラ

第39章 バースト12

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「こんにちは」


バイトが終わって、従業員用の扉から外に出ると、待ち構えていたかのように、カホが立ってた。

俺は、頭の芯がすっと冷えたのがわかった。


デートしたらもう俺らに近づかないって、約束したって翔に聞いてたけど?



「……………」



まぁ、この手の女の子は、平気で嘘つくか。


俺は、無表情でぺこりと礼をしてその場を通り過ぎようとしたが、再びカホの方から声をかけてきた。



「翔くんにカーディガンを借りたの」

「…………」

「それをあなたに預けようと思って」

「……………」


いろいろとツッコミがある。
何故、翔のカーディガンを借りたのか。
何故、自分のバイト先で翔に直接返さないのか。
何故、俺に預けるのか。


黙って、カホを見やると、カホは手に提げた紙袋を、はい、と俺に手渡してきた。
しぶしぶ受け取って、中身をチラとみれば、確かにそれには翔のものとして見覚えがあった。


「こないだのデートのときに翔くんに借りたから。返しておいてくれる?」

「…………」


何で?とは、聞くまい。
面倒だ。


俺は、頷いて、踵をかえそうとしたら、カホが再び、


「私、翔くんと手を繋いだの」


凛とした声で、俺の足をとめた。

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