
キラキラ
第8章 バースト
「礼儀正しい潤もいいけど、多分さっきのが、素の潤だろう?」
うーん……自分が何をどう口走ったか、全く覚えてないけれど、間違いなく敬語は使ってないな……
黙って、居心地悪そうにしてる俺に、翔は、楽しそうにくつくつ笑った。
「素の潤の方が、いいよ」
………どういう意味だ?
「な、喉乾かねぇ?」
キッチンから、すーっとミネラルウォーターのペットボトルが飛んできて、俺の手の中にフワリと収まった。
翔のチカラを目の当たりにすると、軽く感動する。
目をやると、翔は、冷蔵庫から、自分の分もだして、俺、喉カラカラ……と言って、一気飲みしてる。
上向いた喉仏の綺麗なラインに、一瞬目が釘付けになった。
コクりコクりと、動く様に、胸がざわめく。
さっきの瞳の色といい、翔には、不思議な色気がある。
童顔な顔してるくせに、ふとした仕草がすごく大人びてて。
さっきなんか、……あれは、勘違いする距離感だ。のしかかられてるシチュエーションに、ドキドキしてしまった。
手のひらも……温かかった。
ぼうっとしてる俺に、翔から声がかかる。
「潤さあ……夕飯食ってかね?」
「え?」
「昨日言ってたじゃん。帰っても一人って」
昨日の帰り、ちょっと時間が遅くなったから、家の人に連絡しないでいいのか、と聞かれた。
俺は、どうせ一人だから大丈夫、と答えた。
父さんは、今、出張中でいないし、母さんは夜勤だったから。
今日も確か、母さん遅くなるって言ってたな。
「家の人は?今日もいないのか?」
「うん……まあ」
「じゃあ、決まりだな。なんか嫌いなものある?」
翔が、冷蔵庫をのぞきながら、聞いてくる。
「ない……よ」
タメ語。タメ語。
「チャーハンとかでもいい?」
「…………手伝うよ」
料理は、わりかし得意だった。夜勤の母さんのかわりに、俺が夕飯作って、父さんと食べることもあるくらいだから。
「料理できるの?」
玉ねぎを手にして、翔は、嬉しそうに笑った。
「できるというか。わりと好きかな」
キッチンに歩みより、シンクに並べられるピーマンを手にとった。
「あ、それ超みじん切りにしてな。智兄がいやがるから(笑)」
「え。大野さんピーマン嫌いなの?」
「緑がみえたら食わねえ。あの人」
「いれなきゃいいじゃん(笑)」
