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キラキラ

第8章 バースト

「ストック切れてたの忘れてたんだ。また買っとくよ」

はい、麦茶、と、翔にボトルとグラスを手渡され、なあんだ…と、とぼとぼと戻ってきた大野さん。

俺は、後ろでクスクス笑ってる翔と顔を見合わせて笑った。
この家の力関係が分かってきた気がする。

いただきます、と口に運んだチャーハンは、すごく美味しかった。

「あ、うまーい!」

と、思わずこぼれた言葉に、翔は、嬉しそうに

「おかわりあるよ?」

と言った。

パラパラに仕上がったご飯粒といい、絶妙な塩加減といい。
ちなみに、卵や他のさまざまな具材にかくれて、緑は見えない。

分かってるのか分かってないのか、大野さんはパクパク食べてる。

バレてないんだ…………すげえ。

チラリ翔を見ると、翔は、だろ?というように目配せしてきた。

かずも、ゆっくりながら、出されたものは完食する勢いで口に運んでる。
体調いまいちでも、食べれるなら安心だな。


大野家の食卓は楽しかった。

今日、学校で、あったことを面白おかしくしゃべる翔に、大野さんが笑ってつっこみ、それをかずが微笑みながら見てる。

いいな…………なんか。こういうの。

うまい飯が、さらに美味しくなるよな。


 
と。



…………カラン




話の切れ目に、唐突に響いた乾いた金属音。

その場にいた全員が同じ方向をみた。




かずが、手からスプーンをおとし、固まっている。
目は宙をみて焦点が定まってない。


「かず…さん………?」


「しっ」


思わず声をかけた俺を、鋭く翔が、制した。

大野さんは、口をモグモグさせながら、静かにかずを見つめてる。




かずが、小さく首をふった。

「…………潤くん…………」


小さな呼び掛けに、ドキリとする。

「…………なに?」

「…………相葉くん、今日、…………学校来てた?」

「え?」


思わぬ名前。

なぜ、ここに雅紀の名前がでてくるんだ?

「…………来てたよ」

一緒に昼飯を食べた。
五時間目の授業を、眠いよなあ、だりいなあといいながら、一緒に受けた。

でも。


そこから俺は、勝手に早退したから、知らない。



「…………どうした。何か聞こえるのか」

静かな大野さんの問いかけに、かずが何度も頷いた。

「多分…………相葉くんの声」

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