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キラキラ

第1章 アーモンド

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J


夢みたいだ。
翔くんと、ドライブなんて。

たとえそれが、送る、という名目であっても、ドライブは、ドライブ。

自分をおさえる自信がないから、と、顔をまともにみれない日が続いてたけど、……やっぱり俺は翔くんが好きだ。

翔くんの、一挙一動に揺れ動く自分がいる。

(最も、今日は、心配の割合の方が勝つけどね……)

1日、無理してたのが分かって、何回、「もういいよ」って、言いそうになったか。
実際は、自分たちのかわりはいないんだから、休むなんて、そんなことできるはずない。
でも、言わずにはいられないほど、今日の翔くんは、しんどそうだった。
ラストまで何事もなくて、本当に良かった。

(ようするに仕事しすぎなんだよな……。で、まともに食ってない、寝てない、じゃな)

信号が、赤にかわったのを確認して、前の車に続いてゆっくり減速する。

「ねえ、翔くん。これ、まだまっすぐでいいの?」

…………返事がない。

「?翔くん?」

助手席をみると、リラックスモードで、完全に眠りこけてる翔くんがいる。

(え)

「ちょっと……ちょっと翔くん、起きて」

焦って、肩を軽くたたいてみても、深い眠りにおちてるのか、サラッと髪の毛がゆれるだけ。

そうこうしてる間に信号は、青にかわり、再び車の列が流れ出す。

「翔くーん!?」
「…………」

強めによびかけても、かえってくるのは沈黙。


(マジかよ……)

迷ったのは一瞬だった。

唇をかんで、ハンドルをきった。
右折レーンに入り、Uターンする。

(……俺、耐えれるかな)


自分のマンションに向かって、静かにアクセルを踏み込んだ。





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