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キラキラ

第8章 バースト

「おっと」

すかさず、翔が、動き出したやつらを、チカラでバシバシ弾き飛ばしていく。

わ、とか、うおっ、とかいろんな悲鳴が、そこかしこであがる。

大勢は翔に任せて、俺は、蛇目に跨がり、胸ぐらをつかみあげた。

「いい加減にしとけよ、おまえ。筋違いも甚だしいぜ?」

 
誰かと思えば…と、蛇目は、気持ち悪い顔で見上げてきた。

「……おまえか……昨日…ヤられて泣いて帰ったんじゃねえのかよ」


「あいにくだったな。ヤられてなんかねえよ」


くそっ、生理的にあわねえ、この面。

俺は、おもいっきり頭突きをして、手を離した。

足元にベタっとおちた蛇目を、もう一度力一杯蹴りあげた。

ぐっ…………とヤツから変な声があがった。

「次に俺らにちょっかい出したら、殺す」

「てめぇ…」

「それとも。警察呼ぶか? え? 」


あとで、翔にきいたら、この時の俺は、氷みたいな目をしていたという。

そうだろうな。

これだけ怒ったのは久しぶりだった。

跳ばなかったのは、奇跡だ。



もう一度、渾身の力をこめて蹴りあげて。


俺は、雅紀に歩み寄った。


「雅紀……しっかりしろ」


抱き起こして、水でぬれた前髪をかきあげてやる。
ピクッと睫毛が震えてうっすらと子犬みたいな目があいた。

額から流れてる血が、目に入るみたいで、痛そうにバチパチ瞬きを繰り返し、

「…………潤?」

小さく、確認してきた。

ああ、と返事をしたら、不覚にも泣きそうになり、無理矢理笑ってみせた。

俺が泣いてどうする。


「…………おまえさ。こんなやつらにつかまってんなよ……」


「…………しょうがないじゃん………囲まれたんだもん」

ヒュウヒュウという、掠れた声で、雅紀も力なく笑ってみせた。


「とりあえずうちに帰ろう。潤、おまえ、もう一回跳べる?」


翔が傍らに座り、雅紀の手を握った。



こんな普通の状態から跳んだことなんてない。


でも。


「翔がいたら、多分できる」


「よし」


ゆっくりと体をおこした雅紀を支える。
髪の毛や、体からポタポタと水滴がおちた。
擦りむいた手のひらが痛々しい。

痛みで顔を歪める雅紀の肩を抱く。

翔は、俺たちをチカラで持ち上げ、「さきに出てて」と、建物の外へ出してくれた。









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