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キラキラ

第8章 バースト

自分たちがいたのは、町並みから少し外れた場所にたつ、閉鎖したショッピングセンターのようだった。

ぼうぼうに生える雑草の向こうにあるフェンスは
立ち入り禁止という体ではられたのだろうが、雨風にさらされサビだらけ。
容易に破れるがために、こういった輩がたまり場所に使用しているのだろう。

ふと、空を見上げると、いくつか星が瞬いてるのが確認できた。
さっきまでの嫌な空気を吐き出したいから、空を見ながら俺は、深く深く深呼吸をした。

「うん…………うん…………大丈夫だよ。ありがとう」

「?」

柔らかな笑顔で、独り言を言いながら静かに頷く雅紀に、目をむけた。

「…………どうした?」

「ん?かずと喋ってた」

雅紀が嬉しそうな顔をして、首をふる。

「途中からさ、テレパスっていうの? あの人、ずーっと声をかけ続けてくれたんだ。頭のなかで、優しく励ましてくれてさ。それこそ、もうすぐ翔さんと、潤が行くから頑張れ、とか。起きろ、とか」

「へえ…………」

「無意識で、かずにSOS出してたんだね、俺」

「つか、最初っから、助けろって叫べよ」

だって、どうやったら、届くか、わかんないもん、と、雅紀は肩をすくめた。

かずが雅紀の叫びを拾ってくれて助かった。

本当に…………間に合って良かった。

…………でも。それにしたって。

「つくづく八つ当たり的なケンカふっかけられたよなあ」

ふうっとため息をついて、少し笑うと、

「だね」  

と言って、雅紀も笑った。

「きっとあいつは、おれが、自分の彼女をふったから、あれだけ逆上したんだろ。変なプライドだよな」 

「…………そか」

低く呟く。 

そのとき。

建物内から、ぎゃああ、とも、わああ、とも、いいがたい、太い断末魔のような叫び声が響き渡った。

思わず、振り返ってしまうような。

ほどなくして、翔が、能面のような顔で、建物からでてきた。
あまりの冷ややかな空気に一瞬戸惑いながら、おい…………と声をかけたら、ふっと、いつもの童顔に戻った。

「おまたせ」

なんだ、このギャップ。
さっきの冷たさは、なんだ。

こえーよ…………何したんだよ…………

「…………中で何を?」

おそるおそる聞くと、

「ちょっとね」

ふふっと笑ってみせる翔は、超絶に悪い顔だった。

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