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キラキラ

第8章 バースト

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ふと、呼ばれた気がして、パソコンから顔をあげる。
サイドボードにおかれた時計をみると、深夜一時になろうかという時間だった。

もうこんな時間か…………

欠伸をひとつして、うーん、と伸びをした。

常日頃、俺が心がけてるのは、朝食と夕食はできるだけ、全員そろって食べること。
そのため、仕事は必ず定時であがり、どうしてもというときは、家に持ち帰っている。
今日は、明日の会議に必要な資料をまとめないといけなかったのだが、…………まあこんなもんでいいだろう。

手元のファイルを閉じて、パソコンの電源をおとした。



自室をでて、廊下を挟んだ向かい側にある部屋を軽くノックする。
返事を待たずに、そっと扉をあけ、ベッドに静かに歩み寄った。
丸まった固まりに、優しく声をかけた。

「…………どうした?」

「………」

「…………かず?」

布団をそっとめくると、小さく丸まったかずが、目をあけた。

「……智さん」

「…………うん?」

「……夢を見たよ。久し振りに」

「……うん」

「…………ツライ」

「そっか…………」

よしよしと頭を撫でる。
かずは、潤んだ目で、じっと俺を見上げる。
助けを求めるように、すがり付くように………。

「…………………抱いてよ」

小さな小さな声。

俺は、静かに首をふった。

「…………明日、100%、熱がでて寝込むと分かってるやつを、抱けるかよ」

今日は、きっとチカラを使いきったのだろう。

相葉くんたちがいるときは、心配かけたくないと頑張ってたかずも、彼らが帰った直後、ほっとしたのか、脱力して、ソファから立ち上がることができなかった。

「…………大丈夫」

「大丈夫じゃねえよ。…………ほら、もう手が熱い」

力なく枕の横に置かれた華奢な手を握る。

不満そうに追ってくる視線。
それを振り切るのは、なかなか手強いのを知ってる俺は、かわりにゆっくり顔を近づけた。

半分あいたかずの薄い唇に、そっと自分のそれをおしつける。

かずの手が俺の手をきゅっと握り返してきた。

ちょっと迷って、少しだけ舌をからめた。

「…………ん…」

かずの甘い声。

…………ダメだ。これ以上は。

ちゅっというリップ音とともに、唇を離した。

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