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キラキラ

第1章 アーモンド

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S


Jr. の時代まで記憶をさかのぼっても、潤の自宅
にお邪魔した覚えはない。

年令も違うし、つるむグループも違ったから。

嵐になってからも、お互いの家を行き来することは、なかったし……。

(なんか、緊張するな……)

歩き出した潤の広い背中を、そわそわしながら、追う。

促されるまま20階でエレベーターを降りた。
通路の一番突き当たりの部屋の前で立ち止まった潤が、こちらを振り返って、イタズラっぽく笑う。

「……すげぇ、散らかってるけど」

「んなん、気にしねえわ」

苦笑して、肩をすくめた。


どうぞ、と扉をあけて中に入った潤に続いて、「……お邪魔しまーす」と足を踏み入れた。

(あ……潤の匂いがする)

男の一人暮らしとは思えない綺麗な玄関。
潤の香水とは、またちがう、潤の匂いがして、なんだか安心する。


「……なに、立ち止まってんの」

入んなよって笑われて、あわてて、靴を脱いだ。




「適当に座ってて。簡単なもんだけど、メシ作るから」

キッチンで、冷蔵庫の中身を見ながら潤が言う。
リビングに入って、思わず

「モデルルームみてーじゃん。どこが、散らかってんだよ」

と、感嘆の声をあげてしまった。


モノトーンでまとめられた色調の部屋。
中央にある存在感のある皮のソファー。
何インチあるんだ、という大きなテレビの傍らには、何百枚というCDが綺麗に並べられている。

おずおずとソファーに腰かけると、小さなガラステーブルに、昨日飲んだのかビールの缶が置きっぱなしになってた。



「翔くん、嫌いなもんあったっけー?」

「ねえよ」

湯気のたつ鍋の向こうから、小気味い包丁の音。
食欲なんてなかったはずなのに、ちょっと小腹がすいてきた気がするから、不思議だった。

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