
キラキラ
第10章 100パーセント
周りは、「さすが翔くん」だの、「櫻井くんは、やっぱり上手だね」、とか言っちゃってるけど、んなわけない。
翔くんの画伯ぶりは、俺が一番知ってる。
だいたいにして、上手な人が下手に描くことはできても、下手な人が上手に描くなんてできるわけがないんだ。
異常にクオリティーの高いキャラクターの絵を見つめて、俺は、背筋が寒くなった。
翔くんは、これをさらさらっと描いた。
俺らの目の前で。
俺は、翔くんを見た。
翔くんは、ふふっと笑って、次のお題を待ってる。
………………マジでおかしい!!!
なんだよ、これ。
誰だ、この人。
てか、メンバー全員変だ…………。
でも。
スタッフの人たちは誰一人疑問を持ってない。
通常の収録の雰囲気とかわらない。
むしろ、俺だけが、あわててる感じ。
どういうことだ?
…………俺がおかしいのか?
なんだか分からなくなってきた。
何が本当で、何が違うのか。
「…………潤ちゃん?顔色悪いよ」
そばにいた雅紀が心配そうに囁いた。
体かぐらぐらする。
ふらっとして、思わず、雅紀の腕を掴んだ。
「…………潤ちゃん?」
雅紀があわてて俺の顔をのぞきこむ。
リーダーがこちらに気がついた。
蒼白な顔の俺を見て、近づいてくる。
「松潤?」
「あ…………いや、大丈夫」
「…………気分悪いの?」
暗に、二日酔いだからだろ、と非難めいた声音に聞こえてしまうのは、俺も、後ろ暗いから。
でも、それが理由じゃない。
「違う。…………大丈夫だから」
翔くんが、大きな目で、じっとこちらを見てるのを感じる。
にのが、上目づかいに、様子をうかがってるのが分かる。
チクショウ…………負けるかよ。
「ほら、リーダーの番だよ」
俺は、リーダーの肩をおしやって、無理矢理笑顔を作った。
じっと様子をみてると、おかしいと感じるのはメンバーだけで、スタッフさんとかは、いつもとかわらないことが分かった。
最初はそれぞれが、誰かの性格に似せて動いてんのかな、とも思ったけど、そうじゃないみたいだ。
クイズに異常に強い雅紀とか。ナマモノを食べれるにのとか。
司会進行の上手なリーダー。パクチーを美味しいと食べる翔くん。
普段、絶対やらないこと、ありえないことが正反対に行われてる。そんな感じだ。
