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キラキラ

第10章 100パーセント


ひとついえるのは、現実ならありえないことばかりだということ。




現実なら…………?
 


自分の発想に愕然とする。



じゃあ、これは、嘘なんだろうか。
それとも夢?

だとしたら、俺は、なんなんだ?



俺は、小さく息をはいた。

もう…………混乱しすぎて、なんだかよく分からない。
ただ、ただ、いつものみんなじゃないことに、不安しか感じなくなってる。
二日酔いの頭痛もひどくなってきた気がして。

リーダーが、ゲストにコメントをふる様子をみながら。

…………俺は、はりつけたような作った笑顔しかできなかった。






収録が終わって楽屋にもどり、着替えもせずに一人ぽつねんと椅子に座ってると、ぽんと肩をたたかれた。

ひかれたように、つと顔をあげると、大好きな大きな目。

「…………翔くん」 

「潤?」

翔くんは、眉をひそめて、俺をまっすぐ見つめてきた。

「どうしたんだ?ずっと元気ないし、顔色も悪いぞ」

「………」

俺を気遣う優しい言葉と声音。

行動は違っても、本質は変わらないね。

孤立してピリピリしていた気持ちが、ふわりと温かくなる。


「ううん…………なんでもないよ。平気」

「今日、来るだろ? お前、車?」

「…………今日?」

「忘れてたのかよ(笑) バレンタインだから一緒にすごそうっつったの、お前だぞ」

そうだった。
世はバレンタイン。
朝までは覚えてたのに、衝撃的すぎることばかりが起こって、頭から抜け落ちてた。

「マネージャーの…車で来た」

朝、酔いが残った状態で運転したらヤバイと思って、迎えを頼んだんだ。


「そう。俺クルマだから乗ってけよ。マネージャーにもそう言っといて」

「うん。分かった」

っていうか、つきあってる設定は、そのまんまなんだ。

都合がいいのか悪いのか。

ちょっとだけ笑えた。



***** ***** *****


翔くんの運転する車の助手席にのるのはキライじゃない。

むしろ結構好きだったりする。

俺の運転する車の助手席で柔らかな笑顔をしてる翔くんを見るのも好きだけど、翔くんの運転中の前を見る鋭い眼差しや、ステアリングをきる手なんかに、ドキドキするんだよね。

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