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キラキラ

第10章 100パーセント


「ん」

翔くんが、前を見たまま、ふいに左手を差し出した。

「?」

俺は、きょとんとその手をみつめる。

…………なに?

「手」

「…………え?」

翔くんは、笑って手をひらひらさせた。

「右手。よこせよ」

え?!

戸惑ってる俺の手を、翔くんは笑って強引に引っ張り、指をからめてつないだ。

…………ええっ?!

翔くんはそのまま、きゅっと俺の手を握りしめ、

「なに食う?晩飯」

何事もないかのように、前方を見つめて聞いてくる。
だけど、俺は、ドキドキしてそれどころじゃなかった。

こんな積極的な翔くん知らない。

俺もこういうことしたくて、つきあいはじめの頃、試しに翔くんにしてみたことがある。

恋人繋ぎしながら、ドライブ。
やってみたかった。

でも、翔くんが異常に恥ずかしがったから、あきらめた経緯があるんだ。


少し神経質そうな細い指が、しっかり俺の指をとらえてて、熱い。

今さらなのに、緊張して、手汗がでてくる。

しかけるのと、されるのとでは、気持ちの持ち方がちがうよ…………。

俺は、焦る気持ちを悟られないように、うつむいてボソッと答えた。

「えっと…………なんでもいい」

「それが一番困るんだって」

翔くんは肩をゆらして笑った。
俺も、うつむいたままくすりと笑った。

俺がいつも言うセリフじゃん(笑)

…………今日、初めて心から笑えた。


「…………じゃあ。豚肉が食べたい」

「豚肉…………しゃぶしゃぶとか?」

翔くんは考えるように首をかしげて、俺を見る。

「ううん。しょうが焼きとかの定食系がいいな」

「…………じゃあ」

翔くんが、しばらく考え込んで、

「家飯にするか。俺、作るよ」

「……………………え?」

空耳か?

「それなら、飲めるしな」

付け加えて、翔くんは嬉しそうに、アクセルを踏み込んだ。

あ、でもお前は、昨日たくさん飲んでるからほどほどにな。

そんな翔くんの言葉も飛んで行く。

作るって??! 翔くんが?!

…………嘘だろ…………。

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