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キラキラ

第10章 100パーセント

そんな俺の心配は杞憂だった。

すなわち、翔くんが恐ろしくクオリティーの高い絵を描いたのと、同じ理屈だ。
普段、ありえないことが、行われるわけなのだから。



もう何度も来ている翔くんの家。

夕飯を家飯にした場合、いつもならキッチンに立つのは俺だ。

でも、今日は、潤は座ってろ、て声をかけて、翔くんがエプロンしてる。
赤いちょっと派手なデザインのエプロンは、俺のだ。
翔くんに意外によく、似合ってる。

へえ…………

新鮮な眺めだな。

俺は、小さなテーブルの椅子をひいて腰かけた。

翔くんは、野菜室からなにか取り出しながら、ぶつぶつ独り言を言ってる。
段取りを考えるように、動いてるのが分かる。



そーいや、冷蔵庫…………中身あるのかな?




特別、買い物もせずに帰ってきたものの。

翔くんは、基本、料理はしないから、俺が翔くんちに行く日がなかなかとれなかったりすると、この家の冷蔵庫の中身は、またたくまに飲み物オンリーになる。



ああ…………でも確か。




記憶をよびおこし……冷凍庫に、豚ロースが入ってたのを思い出した。
いつだったか、翔くんちに泊まるときに少し多目に食材を買ってきたことがあって、冷凍したやつだ。


翔くんは、当然のように冷凍庫からそれをだし、解凍を始めながら、別の鍋に火をかけた。


………翔くんの手際がいい…………。

料理に関しては、壊滅的なセンスの持ち主のはずなのに。

貴重だ。

ちょっと感動しながら、動きを見守る。


でも、そのうちになんだかうずうずしてきた。
こんな機会めったにない。
どうせなら翔くんと並んで、ご飯を作りたい。

俺は、手伝おうか、と声をかけた。

すると、「えー?潤が?」と、笑われた。


……………………なんか、腹立つ❗





そうして出来上がった料理は、すごくおいしかった。
まさか、翔くんの手料理が食べれる日がくるなんて。

感動すら覚える。

ありえない、へんてこな、こんな状況でも、いいこともあるもんだね。

「翔くん、ホント美味しいよ」

二枚目の肉に箸をつけながら、顔をみると、翔くんは嬉しそうに微笑んでビールを飲んだ。

その顔が、ものすごくカッコ良かった。

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