
キラキラ
第10章 100パーセント
おそらく、この先食べる可能性が果てしなく低い、翔くんの手料理を、俺は、こころゆくまで堪能した。
翔くんはニコニコしながら、グラスをかたむけつつ、ちびちび食べてる。
俺は、今日は、禁酒した。
飲むより食べたいもの。
残すなんてもったいない。
箸がとまらない俺に、まだ食うのかよ?って、翔くんに笑ってつっこまれたけど、出されたものもフライパンにあったものも、全部きれいに食べた。
「ごちそうさま」
ああ、幸せ。
翔くんも嬉しそうに、お粗末さまって返事をしてくれる。
これもいつもと逆のパターンだな。
いつもは、俺が、食べてる翔くんを見守ってる。
でも、翔くんがモリモリ食べてくれる気持ちちょっとだけ分かった。
好きな人が作ってくれたものって、それだけで、魔法がかかったみたいに美味しいね。
それを好きな人と食べるんだから、最高。
二人で、後片付けをして
キッチンがきれいになったのを見計らって、翔くんが、
「泊まってくだろ?風呂入ってこいよ」
といった。
「…………うん、ありがと」
と、にこりと返事をしながら、この家においてる自分の着替えを手にバスルームにむかう。
Tシャツを脱ぎ捨てながら、俺は、…………ふとさっき気がついてしまったことを考えてた。
いや、…………だって。
いつもの流れなら、このあと、…………俺が翔くんを美味しくいただくんだけど…………。
…………今日の翔くんって、ナゼかいつもと違うじゃん?
いつも、やらないことをしてるじゃん?
いつも…………やらないこと。
…………正反対なこと。
「ははっ…………」
まさかね。
トクトクと心臓がなりだした。
やたらと今日の翔くんはかっこいいことを思い出す。
いつもの可愛さがなりをひそめてて、雄の匂いがぷんぷんする。
そして、今日の俺は、やけに翔くんに翻弄されてたりするけど。
…………まさかね。
バスルームに入り、シャワーのお湯を熱めにして一気に頭からかぶった。
モウモウとたちのぼる湯気のなか、心臓の音をかきけすように、俺は、わしゃわしゃと、勢いよくシャンプーを始めた。
