
キラキラ
第10章 100パーセント
風呂上がり。
冷蔵庫から、ジンジャーエールを失敬して、バスタオルで髪をくしゃくしゃ乾かしながらソファにどっかり座った。
俺と入れ替わりに、風呂に入った翔くんのシャワーの音を、聞きながらテレビをつける。
バラエティーの、にぎやかな笑い声をききながら、心はここにあらず、だ。
どうしようか…………
そりゃあ。
健全な男子たるもの、惚れてる相手を抱きたいのは、当然のこと。
俺らの関係は、たまたま翔くんが俺に抱かれてくれてるだけってのも分かってる。
でも、それをお互いよしとしてるから、問題ないはずなんだよね。
だから、その役割が逆転することは、考えたことがなかった。
ああ…………でも、そーいや一度だけやばいのあったかな。キッチンで、組み敷かれたっけ。(←第7章 ナチュラル参照)
あのときの翔くんカッコ良かったんだよなあ。
なんだかあのときの翔くんと、今の翔くん、おなじ匂いがするんだよな…………。
どうしよう。
今度こそ、マジで組み敷かれちゃう気がする…………。
俺…………その先は自信ないよ…………
モヤモヤじっと考えてると、画面によく知った顔がうつった。
「あ、リーダー……えっ?!…」
画面の中で流れだしたのは、毎年の風物詩でもある花粉症対策の薬のキャラクターを演じるリーダーのCM 。
紫の宇宙人とともにうつる、ロングヘアーの女の子。
「ははっ。智くんじゃん、これ」
いつのまにか風呂から上がってきた翔くんが水を飲みながら笑った。
「だよね…………可愛いじゃん、リーダー(笑)」
ウインクまでしてる。さまになってるよ。
ウインクと内股で、あわせ技一本!だな。
メンバーの女装は過去、何度もみてきてるけど、これピカ一かも。
「やっぱ、リーダーはキレイな顔してるね…………」
俺が呟くと、翔くんがさらっと、
「俺は、お前の顔もキレイだと思うぞ」
と言った。
…………お。来たな。
翔くんは、俺の横にゆっくり腰かけて、至近距離で俺を見つめて、にこりとした。
……………………ずるい。
そんなベタな誘い文句で、俺を押し倒せるとでも?と思ったのは一瞬で。
気がついたら翔くんの真っ直ぐな大きな瞳に捉えられて動けなくなってる自分がいた。
吸い寄せられるように近づいてきた翔くんの唇に、自然と自分の顎があがる。
しっとりと、唇が重なった。
