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キラキラ

第11章 sweet

声音が、変わった気がして、ふと翔ちゃんを見上げた。
ロールケーキをぷらぷらみせつけながら、妖しく笑う翔ちゃん。

…………あれ…………これ。


翔ちゃんは、ロールケーキを傍らに置いて、俺のあごに指をかけた。
 
「…………カロリー消費、しようか」

やっぱり!

「やだ」


やだやだやだっ!


俺は、慌てて、ぶんぶんっと首を横にふった。あまりにふりすぎて、頭がくらっとする。

「なんで?」

翔ちゃんは、おかしそうに俺の頬に触れる。
その余裕ぶっこいた妖しい笑みの意図することはただひとつ。

二人で気持ちよくなることに持ち込もうとしてる!


「そんなこというなよ」


「やだ」


俺だって、ガキじゃないし、今までも何度か肌はあわせてきてるから、翔ちゃんのだすサインはわかる。
男だしね。

しかも、こんな夜中に俺のわがままに、きてもらっといて、都合いいとは分かってる。

でも、やなんだ。

だって…………。

俺が俺じゃなくなっちゃう。

それが恥ずかしすぎて、死にそうになるんだよ…………。


固まってる俺の顔を愛しそうに撫でながら、翔ちゃんが優しい目になった。

「明日は、何時入りだった?」

「………9時」

「あー……意外に早いんだ」

じゃあ、やめとこか、と翔ちゃんは残念そうに呟いて俺を抱き寄せた。
翔ちゃんの大きな胸に包まれて、心臓が早鐘をうつ。
少し高い体温と翔ちゃんの匂い。
俺は、おずおずと両手を翔ちゃんの背中にまわした。

えっちは、苦手だけど、スキンシップは好き。

こんな、わがまま許してくれるかな?

翔ちゃんの胸に頬をすりよせて、小さく吐息をついた。
翔ちゃんは、俺を抱く腕に少しだけ力をこめた。

「…………智くん」

「ん?」


「…………好きだよ」


「…………うん」


俺もだよ、と小さく返せば、翔ちゃんはくすくす笑って、またぎゅうっと俺を抱く。

「………キスは?してもいい?」 

低く囁かれた。

既にさっき不意討ちでしといて、今さらじゃね?

いいよ、とも、いや、とも言えず、うつむいた顔をあげることができずにいたら、翔ちゃんか、少し力をこめてゆっくり俺の体を押し倒した。

床暖の上に転がって、翔ちゃんを見上げた。

長い前髪の間から、俺の大好きな大きな目が優しく見下ろしてきてる。

優しい………優しい翔ちゃん。

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