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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

二つ目のオニギリは、梅干し。
三つ目はオカカだった。

余裕があるときだけとはいえ、こうやって具を全部かえてくれる翔はすごい。

両親が外国で暮らすことにより、俺と翔の二人で暮らし始めてから、一年。

翔の家事能力は、確実にレベルアップしてる。

俺は、家事に関して言えば能力ゼロだから、翔に頼りきっている。

その翔も、最初は、包丁の握りかたから母さんに教わらないといけないくらいだったのに、今や、すっかり主婦レベルだ。

料理のレパートリーも増え、洗濯掃除もこなしてるのに、学業もおろそかにはしてないようで。

二人だけの生活なら、食事以外はそれほどたいしたことないんだよ?というのは、翔の意見である。

でも、あまりに、完璧な家事っぷりに、本業である学生生活にしわよせがいってないか心配になり、一度確認してみたことがある。
ちょっとは、俺も何かしなきゃな?と、反省するつもりだった。

ところが、ふたを開けてみれば、成績はトップクラスをキープしていることがわかり、思わず兄貴である俺がひいてしまった。
翔が行ってる学校自体も進学校として名高いのに……………。
どんな頭してんだ。


そういうわけで、俺は、安心して家のことは翔にまかせてる。
そのかわり、親父がわりはちゃんとつとめるからな。
相談事は受け付けてやるからな、が、俺のスタンスになった。

何かあれば、俺が全力で翔を守るから。

ふふっと、二人暮らしを始めたころに、記憶をめぐらせながら3つすべて食べ終わると、満腹になった。



俺は、弁当箱をしまい、うーんと伸びをした。
ポカポカした日差しが、気持ちいい。


……………寝よ。


スマホのアラームをセットして、ベンチに横になる。

少々、行儀悪いが、まあいいか。

そよ風が静かに木の葉をゆらす音や、遠くの噴水の音を聞きながら、俺は、目を閉じた。






***** **** *****





「美味かったよ、ありがとな」

帰宅後、弁当箱を出しながら、そう告げると、翔はにっこり笑って「だろ?」と言った。



あのあと、昼寝から目覚め、会社に帰ろうと立ち上がり、ふと振り返ると、色白の少年はまだそのままの姿勢で座っていた。

なんとなく気になりながら、俺は、その場をあとにしたが…………。

捨てられた犬のような寂しい印象が消せずにいた。

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