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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

「智兄?」

「…………ん?」

「どうしたんだよ。難しい顔は、似合わねえからやめろって」

気づかう翔の言葉に我に返り、苦笑う。
あんな、1回見ただけのやつを、気にすることなんかないよな。

俺は、気を取り直して笑顔をつくる。
翔に心配かけたくない。

キッチンから漂ういい匂いに、鼻をひくつかせながら、スーツを脱いだ。

「…………なんでもないよ。それより今日の飯、なに?」

「青椒肉絲」

「…………」



まじか。



無になった俺をみて、翔があははっと笑い転げた。
 
「…………嘘だよ(笑) どんな鼻してんの。肉じゃがだよ」

「…………大人をからかうなよ」

「ピーマン嫌いなのは、子供です」

「なんだとっ」

俺は、翔の首根っこをつかまえて、脇の下をくすぐる。
翔はケラケラ笑って、身をかわした。
細身な体は、すばしっこく、あっさりと距離をとられた。

久しぶりにつかまえてみたら、翔は、また背がのびているように感じた。

今は、まだ俺の方がかろうじて高いが、ぬかされるのも時間の問題だな、こりゃ。

まさに親父のような気分でいたら、翔が自室を指差して、せかした。

「早く、着替えてこいよ。スーツここで脱いだらシワになるっつってんじゃん」

「はいはい」

母さんのような口ぶりの弟に、俺は、のんびりと返事をかえした。





美味い夕飯を終え、後片付け。

皿洗いくらいは、と、夕飯後の後片付けはたいがい俺がやっている。

翔はその横にたち、鍋に残った肉じゃがをタッパーにいれたり、ごそごそと働いていた。

……………こいつ、本当主婦だなあ。

くすりと笑い、俺は泡だらけのスポンジを皿になでつけながら、

「なあ、明日金曜日だし、夕飯は、どっか食いにいこうか」

「え?まじで?」

翔の目が輝く。
期待に満ちた顔を向けられ、俺は、にっこり笑った。

「うん。何が食いたい?」

「肉!」

「(笑) …………焼き肉行くか」 
 
「やった!」

翔が嬉しそうに笑う。
可愛い笑顔に、俺も嬉しくなる。

外食は、久しぶりだからな。
肉でもなんでも食わしてやるよ。

「じゃあ、出てこれるか?六時に、駅な」

「分かった。腹へらしとくね」

「…………ほどほどにな」

空腹がすぎると、機能停止してしまう翔に、俺は、ふふっと、笑って皿の泡を流していった。





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