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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~


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男子高校生は、とにかく食う。

俺があまり食べないほうだから、余計に感じる部分ではあるが、それにしたって。

満足、満足とお腹をさすりながら、隣を歩く翔を、そら恐ろしく見つめる。
その細い体のどこに入っていったんだろう。

大体いったい何人前食った?

二人がけの狭いテーブルには、翔が次々注文する肉やサイドメニューで、あふれかえり、気をきかせた店員が、四人がけのテーブルに案内し直してくれる始末。

絶対に、余ると思い、途中で「大丈夫か?」と、口をはさんだが、なにが?と、素で返された。

俺は、韓国冷麺をちゅるちゅる啜りながら、嬉々として肉を焼き、皿を空にしていく翔を、微笑ましくも、羨望の眼差しで見つめていたのだった。

もちろん完食。


「…………おまえ、よく食えたな、あれだけ」

「よゆーだよ。デザートなら、まだ入るし」

「まじかよ」


俺が、高校生の頃はといえば、あいにくこんなに食べていた記憶はない。
むしろ、食べるのをめんどくさがり、勉強するから、と理由をつけては昼を抜いたりしていたから、母さんが心配して、いつでも食べれるようにおにぎりやらパンやらを、常に食卓においてくれていたくらいだ。

兄弟でこんなにも違うもんなんだな。

俺と肩を並べるくらいにまで成長してる翔を頼もしく思い、クスッと笑った。

少し前まで、中坊だったくせに。

本当に、あれよあれよと、男っぽくなり、時おり大人っぼい表情をするようになった翔。

昔、モデルをしていたという母さんそっくりの顔。


……………モテそうだな。
変な虫がつかなきゃいいがな。

俺は、また保護者の気分になりながら、金曜夜の、少し浮かれた雑踏の中を、翔と二人で歩く、





   
………あ




突如、その部分だけ切り取ったかのように、はるか前方を歩くそいつの後ろ姿を、はっきりと捉えた。

黒いジャンパー、黒いスヌード、黒いリュック。

間違いない。
あの公園にいた子だ。


そいつは、少し背を丸めて、実に怠惰に歩いていた。
人の波から、あきらかにはずれた自分のペースで、ゆっくり歩をすすめている。

まるで、周りにあわせたくないように。

自分の世界にいたいかのように。


翔が何か言ってるのに、生返事しながら、俺は、あの子から目を離せないでいた。

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