テキストサイズ

キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

脳裏に広がる、クリアな映像。

雨に濡れそぼる会社近くの公園だ。
ドローンで撮影する映像のごとく、空から目的の場所をつかみ、一気にピントをあわせてゆく。
 
昼間に弁当を食べた場所。

「……なっ……………」

心臓が凍りついた。
3つ並んだベンチの一番はしに、まだその人はいた。

しとしとと降る雨のなか、彼は、相も変わらずベンチに死んだように横たわっていた。
真っ白な顔は、もはや紙のようで。

雨の日の夜更けの公園に、人は寄りつかないだろう。
だとすれば、誰にも気づかれることもなく、朝までこのままの可能性もある。

「…………ちっ」

思わず舌打ちをした。


…………なにやってんだ。

死ぬ気か?!

俺は、自分を大事にしないやつが一番嫌いだ!


イライラと立ち上がり、考えた。

その場を熊のようにぐるぐる歩き回り、考えた。

考えて。

考えて。


……………俺は、翔の自室に向かった。


軽くノックをすると、「はい」という、翔の声。

「………入るぞ…」

カチャリとドアを開けると、机に向かう翔の後ろ姿。

「なに?」

翔が、振り返らずに聞いてくる。
忙しく計算式を解いてるシャーペンの音がする。
集中しているのか、ぶつぶつなにかを唱えてる。

そうだよな。

勉強中だよな。

忙しいよな。

でも…………ごめん。


入り口で突っ立ってる俺が何もしゃべらないもんだから、翔が不思議そうに、振り返った。

そして、俺をみて目を丸くした。

「…………なんつー顔してんの、智兄」


そんな情けない顔してるかな、俺。

でも、考えて考えて考えた結論を、翔に理解してもらえるか分からないから、不安で。

自分でも分からないこの思いを、うまく伝えれるだろうか。

「…………どうしたの」

「あのさ、聞いてほしいことがあって」

翔は、ピンときた表情になる。

「それは、ここ最近智兄が、ずっと考えこんでいたこと?」

…………鋭いな。

「うん……………そう」


俺は、こないだからの自分の思いをかいつまんで話した。
翔は、うん…………うん……………、と真顔で頷きながら聞き、最後に俺に問うた。

「…………で?智兄はどうしたいの」

「………助けてやりたい」

「知らない子だよ」

「うん」

「助ける義理ないよね?」

「……うん」







ストーリーメニュー

TOPTOPへ