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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

「それでも?」

「…………気になるんだ。俺の勘でしかないから、上手く言えないんだけど、助けなきゃ、って思うんだ」

「救急車呼んでやればいいんじゃない?」

「…………あの子が呼ばれることを望んでない気がする」

「…………じゃあ、ここに連れてきたいの?」

「…………うん」

「何かあったらどうするの?」

「その時考える」

ここまで、やり取りして、翔はついに笑いだした。
相変わらず智兄は頑固だね、と笑う翔に、俺は、困った顔になるしかなかった。
翔は、立ち上がり、クローゼットから薄いジャンパーを取り出した。
そうして、ちょっとだけ真面目な顔をして俺に告げた。

「…………智兄の頼みでも、少しでも変な素振りがあったら、病人だろうがなんだろうが、俺は、容赦なく追い出すからね?」

「わかった」

「……うん。……じゃあ、行こ」

頷く俺に、翔は「レインコートどこだっけ?」と、玄関に向かった。 
俺も慌てて、スエットの上から、ジャンパーをはおるために、自室に向かった。





雨は、小雨に変わっていた。

霧雨に近い空を、翔と飛ぶ。

見られたら面倒だから、空を行くことはめったにないが、今は夜だし、雨だし、空を見上げるものも少ないだろうと、翔のチカラに頼ることにした。

翔のチカラは、念動力。
手を触れずに、ものを動かすことができる。
その応用で、体を浮かし、こうして飛ぶことも可能なのだ。

レインコートは、気休めと言わんばかりに、細かい雨粒が顔にサーッとうちつけ、髪をぬらす。
暗闇のなか、煙る雨のせいで、少し離れた翔の姿がぼんやりとしか見えない。
下界からの明かりも今日は、あまり意味をなさない。

クシャンと、くしゃみをして、翔は寒そうに体をすくめた。

「…………夜はやっぱ冷えるね」

「そうだな」

こんなんで、翔に風邪ひかせたら、俺は、兄貴失格だなあ…………と、罪悪感にさいなまれながら、冷たくなった両方の手に、はあっと息をふきかけた。

「あのへん?」


ほどなくして、俺たちは、俺の会社の近くにある公園の上空にきた。
さすがに、空からだと、自宅から直線だから近い。

眼下に、噴水が小さくみえる。

「あの、噴水のこっちがわにある木のあたり」

俺が指示すると、翔が方向を定めながら注意深く着地の体勢にもっていった。

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