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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

俺が視た映像のまま、彼はそのベンチに横たわっていた。

一つ救いだったのはベンチの後方にある木々が、思ったより枝をはらせていたため、それが傘の役割になり、彼は直接雨粒をそれほどうけていなかったことだ。

それでも、ふく雨風に、髪や体がしっとりするくらいには、濡れている。

青白い顔。
瞳は固く閉じられていて、近づくと体が小刻みにゆれてるのが、みてとれた。
歯の根があわないようで、ガチガチと震えているのだ。

翔はあきれたようにため息をついた。

「………バッカじゃない…こいつ…………見るからにわけありじゃん。マジで連れて帰るの?」

「うん」

連れて帰る。

夕方交わした瞳が忘れられない。

捨て犬のような、瞳。
きっと、心では助けを訴えてた…………ように感じて仕方がない。

俺は、彼の肩の下と膝裏に腕を差し込み、持ち上げようとして、翔に静止された。

「…………いいよ。俺がやる」

翔が、あきらめた声音で、人差し指をくいっと上にあげると、彼はふわりと浮き上がった。
意識がなくて幸いだ。

「急いで帰ろ」

翔は、そのまま自分と俺の体も一緒に急上昇させた。
そして来たときより、倍の早さで、俺たちは飛んだ。






マンションにつき、ベランダから部屋に入った。

翔は、器用に指を動かして、俺が急いでバスタオルをひいたソファに彼を静かにおろした。

レインコートを着てたけど、俺たちも結構濡れていて。
冷えたであろう翔が気になり、俺は、風呂に入ってこい、と言った。

翔は、滴がしたたりおちる前髪を、タオルでがしがしふきながら、ソファの上で、ガタガタ震えて横たわる彼を顎でさした。

「…………こいつ冷えきってるじゃん。こいつからいれてやれば?あっためるのが先じゃない?」

「うん……………そっか、そうだな」

着替えは…………みたところ小柄だから、俺の服でいけるだろう。


びしょ濡れのジャンパーを脱がし、しっとり濡れ、冷たく肌にはりついてる白いシャツのボタンに手をかける。

ひとつ、ふたつはずして、ぎくりと手がとまった。
あらわになった首筋や、鎖骨付近に散らばる赤いあざ。

それが何を意味するものなのか、瞬時に悟る。

俺のとまった指に、翔も気づき、険しい顔になった。

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