
キラキラ
第12章 ほたる ~バースト2~
翔が、何か言いたげな目をむけたが、俺は、黙って首をふった。
そうだよ。
…………わけありだろ。
こんなことで、驚いててどうする。
俺は、ためらっていた手をゆっくり動かし、ボタンをすべてはずして、シャツを脱がせ、Tシャツ一枚にする。
透き通るような白い腕。
ガタガタ震えている白いTシャツ姿の彼を、どうやって風呂につれていこうか考えてたら、横から翔がチカラで、ふわりと持ち上げた。
「俺が、運んでやるよ」
ぼそっと言い置いて、まるで荷物を運ぶかのように片手で浮かせながら、浴室に向かって歩いていく。
俺は、サンキュと言ってあとに続いた。
「………運ぶだけだよ。三助になる気はないから、智兄よろしくね? 体重は、このまま軽くしといてあげるから」
脱衣所にそっとおろし、翔は、着替えとベッドの用意をしてくる、と出ていった。
なんだかんだで頼りになる弟だ。
俺は、Tシャツを脱がした。
細い腕に、また驚く。
華奢にもほどがあるだろう。
雨でビショビショになり色がかわったスエットパンツも脱がした。
下着も手早くとり、浴室に運ぶ。
温かい湯を全身にかけてやりながら、白い肌に散らばる赤いあざに、とまどってしまう。
愛があるような、残り方じゃない。
鎖骨、首筋だけじゃなく、胸、腰、背中。
内腿や下腹部、ありとあらゆる場所に、無理矢理、つけられたような、鬱血のあと。
太ももの内側には、血液だろうか。
赤い筋が何筋も伝った痕跡がある。
そして、なにより、雄の残り香が気になった。
入れられ、かけられ、したのだろうか。
…………胸が痛くなってきた。
例え、同意だったにしても、この後処理はないだろう。
俺は、自分もシャワーをあびてしまいビショビショになってしまうことを気にもせず、スポンジにたっぷりボディーソープを含ませ、泡立てながら全て洗い流してやった。
翔のチカラのおかげで羽のように軽い彼を、赤ん坊のように湯船に沈めてやる。
タオルで体を覆い、首だけ支えて、温めた。
ガチガチ震えていた体が、静かになってゆく。
蒼白な顔色だったが、だんだんと頬に赤みがさしてきた頃合いを見はからい、ゆっくり抱き上げた。
浴室を出ると、気配を感じた翔が、「着替えしとくから、智兄もあったまってきて」と、片手で彼を俺から受けとり、運んでいった。
………ありがとう。翔。
